2つの刺身の旨味

鮮度が良い刺身

活きの良い魚は美味いとよく耳にする。

確かに鮮度が悪ければ生臭く不味そうだ。

生きている魚を活き作りのように直ぐにさばいて食べる刺身の味は特別だ。

臭みがない。

でも鮮度が良いだけが美味い刺身なのだろうか?

白身魚

白身の魚なら鮮度が良ければ食感もコリコリした感じだ。

ちょっと味わえない刺身だ。

鮮度が良ければどの魚も臭さがなくコリコリ感がある。

だが同じ味に感じてしまう。

甘みとか旨みとかはあまり感じない。

死後硬直の魚の刺身

死後硬直している白身魚も同じで、魚臭さが無く食感がコリコリした感じだが甘み旨みはあまり感じない。

生きた魚を刺身にした時と同じなのだ。

鮮度はとても良いので魚臭さが少ない。

けれど甘み旨みが少ない。

甘み旨み

これは魚の旨味成分がまだ十分熟成されてないからだ。

魚は死後硬直をしていることがとても鮮度が良い証である。

死んで直ぐに死後硬直を始めるからだ。

死後硬直が終わると体が柔らかくなる。

この状態から熟成が始まる。

熟成

つまり旨み成分が出てくるのがこの時からだ。

熟成はさらに進み旨味成分がいっぱいになる。

次に生臭さが出てくる。

処理の仕方が悪くても生臭さが出る。

そして腐食の段階にはいり、アンモニアが出てくる。

刺身のもう一つの味

なので刺身のもう一つの楽しみ方は旨味成分の熟成時だ。

死後硬直の直後ではまだ旨味成分は出ていないので冷蔵庫の冷蔵室で1日から数日眠らせておく。

イワシなどの小魚は痛みが早いので例外。

この時、腐敗の早いエラと内臓は必ず取り除いておくことは重要。

熟成は三枚におろした状態でも、さくの状態でも良い。

生臭い匂いがした時は刺身をあきらめ、火を通してから食べる用心さを持つことも必要だ。

大きなマグロはこの熟成を冷蔵で6日間から30日間おく料理人もいる。

その料理人の求めるこだわりの味にするためだ。




処理それぞれの意味

血抜き

魚を釣り上げた後にエラの血管を切って血抜きをするのは身肉に残る血液を抜くため。

身肉に残る血液が生臭さを感じさせる。

冷やす

海水氷で魚を冷やすのは鮮度を長い時間保つためと、内臓にアナサキス(回虫)がいれば身肉に侵入する、それを阻止するためだ。

アナサキスは冷たい状態では内臓からは出ない。

しかし寄生した魚が死んで体温が高くなると苦しくて身肉へと侵入する。

脳締め

脳締め(魚の眉間にピックなどで穴を開け、ゴリゴリ回して脳を破壊する)は暴れる魚の活動を止め、後に旨味成分になる物質が減るのを防ぐためだ。

神経締め

神経締めは背骨沿いにある脊髄を破壊することで死後硬直するまでの時間を延ばすことが出来る。

魚の大きさと処理の違い

小魚

小さな魚(キス、イワシなど)は血抜きもせずに海水氷に入れる。

小さすぎて処理が面倒なのと血抜きをしても味はあまり変わらない。

それよりも早く食べることが優先。

クーラーの中には少しの海水と氷を入れ、その中で魚を冷やし持ち帰る。

海水でなく真水だと海で釣った魚は水っぽくなるので間違えずに海水を入れる。

中魚

中型の魚(アジ、サバ)は喉をハサミで切れば血抜きも簡単。

その後、海水を入れたバケツに入れて血を抜く。

サバの場合は暴れて水をまき散らすので脳締めをしてもよい。

血が出なくなったら上記と同じ海水氷の入ったクーラーに入れる。

直ぐに食べるなら神経締めも必要ない。

神経締めは食べるまで鮮度を長く保ちたい時に必要。

大魚

大型の魚は暴れぬように脳締めをする。

次に血抜きをしてから神経締めを行う。

エラと内臓を取りさる。

クーラーに海水氷を用意し持ち帰る。

氷が効いて良く冷えているならそのまま熟成させ翌日に解体してもよい。