クジラは陸上で生きられない?

ザトウクジラ来遊

今年もザトウクジラがやってきた。

カナダの方からハワイを経由して小笠原諸島や奄美大島、沖縄の方々の島へ、子育てのため。

4月を過ぎると故郷に帰っていく。

その間、親クジラはエサを食べない。

ザトウクジラは大きさは15m、体重30トン以上になるヒゲクジラ。

ザトウクジラ捕鯨禁止から10年

日本捕鯨も10年前から捕鯨反対活動によりザトウクジラの捕鯨を取りやめている。

そのためシーズンを合わせてザトウクジラの回遊地域に行けば高い確率で見られるようになった。

クジラは魚でなく哺乳類、肺で呼吸をし、交尾をし、出産もし、授乳もする。

クジラは陸上で生きられない

それなのにクジラは陸上では生きていくことが出来ない。

肺で呼吸しているにもかかわらずにだ。

なぜだろう?

理由は2つ

陸上では呼吸困難

クジラが陸上にあがれば数分のうちに呼吸困難になってしまう。

簡単に言えば体重が重すぎて肺を広げることが出来ない。

自分の体重が上から重くのし掛かって息を吸うことが出来ないのだ。

横たわった貴方の体の上に5人の人間がうつ伏せに乗ったらどうだろう。

重くて苦しくなる、息が出来ない、数分も続いたなら窒息してしまう。

重力で体重により息が出来ない

前回、「海中と陸上の生活、生物にとって何が違うのか?453 」に記したとおり水中は重力の影響をあまり受けない無重力に近い環境だ。

空気と水では800倍密度が違う。

海で生きていくクジラは都合の良いように巨大になっていった。

重力の影響を受けない水中では骨も関節も筋肉も陸上生物ほど強い必要はない。

そのように進化したクジラは陸上に戻ることなく、環境に合わせて進化していった。

何かの原因で浜に打ち上がるようなことがあればクジラは自分の体重で呼吸が出来ず、窒息してしまう。

イルカは少し長く息が出来る

小型のクジラの仲間、イルカ(6m以下、日本では4m以下)はクジラより小さく軽いので陸上において、より長い時間呼吸ができる。

しかし長時間はイルカでも呼吸を続けられない。

クジラでもイルカでも陸上で生きていくためには重力の影響を受けないで呼吸できるように最小限のプールに水を満たし体を浮かべる必要がある。

タカアシガニは歩けない

これは余談である。

世界最大のカニで知られるタカアシガニ、両手を広げた大きさは4m弱になる。

日本特産のカニで主に駿河湾と相模湾の深海に生息する。

水中では蜘蛛のように足を広げ、体を持ち上げ移動する。

けれど陸上にタカシアシガニを上げると動かなくなる。

実は動かないのではなく、体が重くて動けないのだ。

体を持ちあげるほど強い筋肉を持っていない。

それほど海の生物には重力が重く影響する。

水中は冷たい、陸上は暑い

暑い空気

水中にいる生物にとって空気中はとても暑い、または寒い環境だ。

これも前回、「海中と陸上の違い?453 」に記した。

熱伝導率が25倍も違うためだ。

魚達にとって気温の高い空気中にいれば体温が上がってしまう。

人間の温かい手が触れることも魚にとっては不愉快。

温度変化の大きい陸上

水中生物を空気中にあげれば、水温よりも高い気温であれば急激に体温は上がってしまう。

水がなく熱の放出量が下がるためだ。

一日の水中での温度変化はあまりない、けれど陸上は10℃以上変化することはよくある。

水中生物は急激な温度変化が苦手だ。

皮膚を濡らす必要

クジラやイルカにとっても同じだ。

体の表面が乾けば気温によって体温が上昇してしまう。

体温が上昇すれば生命を維持することが出来ない。

陸上を移送するときには皮膚が乾かぬように年中水をかけて濡らしてやる必要がある。

クジラの泳げるプール

イルカは比較的小型なのでプールで飼育することができる。

クジラは大型なので十分泳ぎ回るプールを準備することができない。

今のところシャチまでは飼育できる時代になっている。

さらに科学が発達すれば浜に打ちあがった巨大なクジラを救うためにプールを準備する時代が来るかもしれない。