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自衛隊ヘリコプター捜索の飽和潜水とは

捜索中の陸上自衛隊ヘリコプター

宮古島市伊良部島沖の深度100m

今もって陸上自衛隊ヘリコプターの事故の原因は解らない。

10名を乗せた機体の一部と乗組員数名らしき姿が無人カメラによって見つかった。

場所は宮古島市伊良部島沖の深度100m。

昨年北海道で沈没した観光船カズワンを引き上げた特殊潜水の飽和潜水で事実を確認する。

潜水艦救難艦「ちはや」

潜水艦救難艦ちはや

海上自衛隊の潜水艦救難艦「ちはや」が今日から飽和潜水で現場を調査、回収する。

排水量5,450トン、長さ128m、速力21ノット、乗員125人。

深海飽和潜水をするための艦上減圧室と連結できる水中作業潜水カプセルを搭載。

手術室とレントゲン室も備える。

深度100mの潜水とは

スキューバ潜水では深すぎる

深度100mはスキューバダイビングで作業するには深すぎる。

実際にスキューバダイビングで潜った場合、減圧症をおこさないためには多くの減圧時間が必要になる。

そこで減圧時間の長い飽和潜水と比較する。

深度100mの今回の潜水では飽和潜水に分が上がる。

減圧症の以外の問題点

空気量の制限。

窒素酔いの問題。

水温低下の問題。

呼吸抵抗の問題。

減圧の問題。

これらすべての問題を飽和潜水なら解決できる。

飽和潜水は

空気量の制限

船上から必要量の空気を毎時送気続ける。

窒素酔いの問題

酸素とヘリウムの混合ガスを呼吸することで回避。

水温低下の問題

船上から温度40℃の湯をダイバーのダイビングスーツ内に送ることで体温維持。

呼吸抵抗の問題

酸素とヘリウムまたは水素の混合ガスを呼吸することでガス密度を低下。

減圧の問題

チャンバーの中でゆっくり時間かけて減圧することで減圧症を予防。

100mの飽和潜水

飽和潜水チャンバー内6名のチーム

船上の圧力室(チャンバー室)に6名の作業員が入る。

2名が大深度潜水作業ダイバー、1名が水中移動チャンバー内サポート員。

残り3名が船上ベースチャンバー待期要員。

圧力室(チャンバー室)

チャンバーは船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーの2機が1セット。

船上ベースチャンバーと水中移動チャンバー2機は船上で接続されている。

加圧しても2つのチャンバー機内は均等の圧力を維持する。

作業員は船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーの間を自由に移動できる。

2気圧に上げ体調を確認

チャンバー内を1気圧から2気圧に上げ、6人全員の体調を確認。

室温28℃、湿度50%、やや暑い。(細菌の繁殖しやすい状態)

チャンバー内禁止事項

火気厳禁、喫煙禁止、マッチとライターの持込み禁止。(酸素が濃いので火事になる)

スマホや携帯などの通信器の持ち込み禁止。(水中に電波は届かない、破損でケガを危惧)

耳かき、カミソリ、飴の持ち込み禁止。(ケガを危惧)

アルコール禁止。

チャンバー内可能事項

雑誌や本類は持ち込み可能。

簡易2段ベット、トイレ、シャワーがある。

1~2週間チャンバーから出られないのでケガをできない。

2気圧から11気圧までヘリウムを注入

体が2気圧の状態に慣れたらヘリウムを注入して加圧。

11気圧まで様子を見ながら加圧。

11気圧になったら6時間以上体を慣らす。

水中移動チャンバーで100mの水底へ

11気圧に体が慣れたら潜水班3人が水中移動チャンバー(カプセル)へ移動。

船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーの両方の入り口をロックし切り離す。

水中移動チャンバーを潜降プールより水底へ降下ワイヤーで吊り降ろす。

1~2時間で100mの水底へ到着。

水底は暗い。

飽和潜水スタート

水中作業はダイバー2名、水中移動チャンバーには補助員1名が残る。

ライトは重さ20kgのヘルメットに取り付けられている。

ヘリウムと酸素の混合ガスを呼吸。

呼吸ガスが遮断されたときのために30kgのリブリーザーを背負う。

ダイバーは船上から送られる40℃の湯をスーツに回す。

作業中、ダイバーと水中移動チャンバーは命綱で繋がっている。

作業時間は最大4時間。

作業終了後、作業ダイバーは水中移動チャンバーに戻る。

水中班3名を乗せた水中移動チャンバーは水面へ引き上げられる。

水中移動チャンバーを水面へ引き揚げ

チャンバー内の圧力は11気圧。

作業船に上げられたら船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーを接続して待期。

必要があれば翌日の作業へ続く。

全作業が終わるまで体調を崩すことは許されない。

チャンバーの外に出来るには100時間

全水中作業が終了して初めてベースチャンバーと水中移動チャンバーの圧力を下げることができる。

減圧症が発症しないように1時間かけて0.1気圧下げる。

陸上の1気圧に戻すには10気圧下げる。

減圧の時間は100時間、つまり4日と4時間。

作業ダイビングの全工程を入れると6~14日間は狭いチャンバーの中で6人で生活しなければならい。