飽和潜水とは何?

飽和とは?

気体は液体に溶ける

空気は水に溶け込む。

気圧に応じて溶け込む量は変わる。

陸上の気圧は1気圧。

1気圧分の空気が溶け込んでいる。

気圧が変わらなければこれ以上は溶け込まない。

周囲圧でそれ以上溶け込まない状態に達した時、飽和状態という。

深度に応じて飽和状態が違う

10mの深度に潜ると気圧は2気圧になる。

ダイバーが10mに潜った瞬間にはまだ飽和状態にはなっていない。

時間をかけて2気圧分になるまで空気が溶け込む。

それ以上空気が溶け込まなくなった時、その深度における飽和状態という。

当然、深ければ深いほど飽和状態時の溶け込む空気の量は多い。

飽和潜水とは?

飽和潜水

飽和状態にした潜水を飽和潜水という。

飽和潜水のメリット

飽和状態にした潜水は幾ら長く潜水しても、それ以上のガス量が体内に溶け込むことはない。

ゆえに潜水時間に関係なく減圧時間は変わらない。

飽和潜水のデメリット

通常の潜水に比べ飽和潜水はガスの溶け込む量が多い。

減圧時間がとても長い。

飽和潜水で必要なもの

充分な呼吸ガス、大深度の場合はヘリウムと酸素の混合ガス。

特別な加温器材。

減圧時間に何日もかかるためチャンバーと言われる圧力室。

水中移動用のチャンバー(ベル)。

器材や道具、ダイバーの準備出来る作業船。

ダイバーの体力、知識、技術、経験。

作業ダイバー2名、補助ダイバー1名。

船上 staff 多数。

とても大掛かりになる。

知床観光船沈没

観光船の深度

深度120mに沈む観光船。

行方不明者の捜索。

沈潜の事故調査のための引き上げ。

深度120mの作業

作業には長い時間がかかる。

窒素酔い対策としてヘリウムと酸素の混合ガスが必要。

深度120mは通常の潜水では減圧時間が掛かり過ぎで効率が悪すぎる。

飽和潜水に効率の軍配が上がる。

水温が冷たいため加温が必要。

船上ベースチャンバー(圧力室)と水中移動チャンバーの準備がある作業船が必要。

飽和潜水(自衛隊の場合)

飽和潜水船上でスタート

圧力室に入るチャンバー員の人数は6人。

船上ベースチャンバー(圧力室)と水中移動チャンバー(ベル)2器の準備。

船上ベースチャンバーと水中移動チャンバー2器は船上で過圧の状態では2つとも接続されている。

3人が水中斑、残り3人は船上のベースチャンバーでサポート待期。

6人でベースチャンバーの中へ入り1気圧から2気圧に上げ体調を確認。

チャンバー内

チャンバー内は気温28℃、湿度50%。

すごしやすいが細菌も繁殖しやすい。

  • 火気厳禁、喫煙禁止、ライターやマッチの持ち込み禁止。酸素が濃いので火事になる。
  • スマホや携帯などの通信器の持ち込み禁止。水中に電波は届かない、破損でケガを危惧。
  • カミソリ、耳かき、飴の持ち込み禁止。ケガを危惧。
  • アルコール禁止。
  • 雑誌や本類は持ち込み可能。

狭い空間に6人。

簡易2段ベット、トイレ、シャワーがある。

1~2週間は中から出られない。

2気圧からヘリウムガス過圧

2気圧に体が慣れたらヘリウムガスを注入してゆっくり加圧する。

13気圧まで様子を見ながら加圧、13気圧で6時間以上体を慣らす。

水中班3人が水中移動チャンバー(ベル)へ移動。

船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーの両方をロックし、切り離す。

目的地で水中移動チャンバーをワイヤーで吊り降ろす

水中移動チャンバーを潜降プールより水底へ降下。

1~2時間で120mの水底へ到着。

水底は暗いため昼夜の区別なし。

飽和潜水スタート

作業ダイバーは2名、1名は補助員として水中移動チャンバーに残る。

ダイバーは船上から送られる40℃の湯をスーツに回す。

同じく送られてくるヘリウムと酸素の混合ガスを呼吸。

ライトは重さ20kgのヘルメットに取り付けられている。

呼吸ガスが遮断されたときのために30kgの閉鎖式潜水機を背負って作業開始。

作業中、ダイバーと水中移動チャンバーは命綱で繋がっている。

作業時間は最大4時間。

作業終了後、作業ダイバーは水中移動チャンバーに戻る。

水中移動チャンバーを水面へ引き揚げ

水中班3名を乗せた水中移動チャンバーは水面へ引き上げられる。

しかし室内の圧力とガスはそのまま13気圧。

作業船に上げられたら船上ベースチャンバーと水中移動チャンバーを接続して待期。

翌日、翌々日の作業へ続く。

全作業が終わるまで体調を崩すことは許されない。

減圧には5日間

全作業が終了して初めて船上チャンバーの圧力を下げることができる。

減圧症の心配なく圧力を下げるには0.1気圧下げるのに約1時間かける。

陸上の1気圧に戻すには12気圧下げる必要がある。

120時間が減圧の時間、つまり5日間。

チャンバーの外に出られるのは5日後。

作業ダイビングの全工程を入れると8~10日間は狭いチャンバーの中で6人で生活しなければならい。

とっても厳しい飽和潜水。