ハコフグの肉は無毒だが内臓に毒がある
愛嬌のあるハコフグ
関東近辺でもダイビングをすればハコフグは簡単に見られる。
四角い体という奇妙な形と愛嬌のある顔。
キスをしたくなりようなオチョボ口。
けっして早く泳げない魚。
人を襲うことも無い。
食べられるハコフグの肉は無毒
ハコフグの食べられる肉は無毒だけれどハコフグには2つの毒がある。
といってもハコフグはマフグやトラフグの毒であるテトロドトキシンは持っていない。
一般のフグは血液や精巣、卵巣、肝臓などの内臓にテトロドトキシンという強い毒を持っている。
フグの種類によって毒を保持している器官が違う。
フグ料理はフグ調理師免許がいる
そのためフグを料理して他人に提供するにはフグの調理師免許がいる。
フグの調理師免許を所持していない者がフグを調理して他人に提供することは違法となる。
但し、自己責任で自分でフグを料理して食べることは違法にならず、罪にならない。
漁師が自分で獲ったフグを昔ながらの料理法でさばいて食べても罰せられることはない。
以前はハコフグに対しては規制がなかった、けれど現在はハコフグを料理するにもフグの調理師免許が必要だ。
ハコフグの毒はパリトキシン
毒のエサを食べることで蓄積
ハコフグの毒は一般のフグと毒の種類が違う。
生息地によってハコフグの内臓にパリトキシンという毒が蓄積される。
パリトキシンはフグ毒のテトロドトキシンよりも強い。
パリトキシンもテトロドトキシンも熱を加えても分解はせず毒の効力は維持する。
パリトキシンはイワスナギンチャクから
ハコフグは元々内臓に毒を持たない。
雑食性のハコフグは藻や小さなカニ、エビ、貝、ゴカイ、イソギンチャクなど色々な物を食べる。
イワスナギンチャクの仲間に毒性の強いパリトキシンを持つものがいる。
主に水温の暖かい熱帯や亜熱帯地域に生息するイワスナギンチャクやスナギンチャクに強いパリトキシンを持つ可能性がある。
ハコフグがこのイワスナギンチャクを食べ続けることによって内臓にパリトキシンが蓄積する。
パリトキシンが内臓に蓄積したハコフグの内臓を食べた場合は非常に危険だ。
ハコフグの仲間も危険
四角い体型をしたハコフグの仲間は共通の毒を持つ。
幼魚が人気のミナミハコフグやクロハコフグも同様に内臓は危険だ。
また同じようにイワスナギンチャクを食べる魚はハコフグの仲間のウミスズメ、シマウミスズメ、コンゴウフグなど角のあるハコフグも同様に内臓を食べることは危険である。
ハコフグは皮膚から粘液毒を出す
ハコフグのもうひとつの毒パトフキシン
ハコフグの体は固い。
六角形の甲羅のようなか骨格で体が覆われ、その表面に皮膚がある。
英語名は Box Fish 。
長方形の体に目鼻、エラ、ヒレをつけたような魚。
一般のフグのように水を飲んで体を膨らますことはできない。
ハコフグのもうひとつの毒パトフキシン
敵に襲われた時は体を膨らます代わりに皮膚の表面から毒のある特殊な粘液を出し、敵から身を守る。
この粘液の中にはパフトキシンという神経毒があり、敵を虐待する。
知り合いでハコフグの幼魚を口の中に入れた人間がいて、その後しばらくは唇が痺れて閉じられなかった。
ハコフグを襲った魚は口が痺れて食べることを止めてしまう。
ハコフグを飼うときは要注意
また水槽でハコフグを飼うときは覚悟が必要。
ハコフグがもし粘着毒を出すと同じ水槽の魚が全て死滅し、そのままだとハコフグ自身も死滅することがある。
水族館でも起きる出来事だ。
ハコフグは食べられる
ハコフグを自分で料理して食べるなら自己責任で
無理にハコフグを食べる必要はない。
それでも食べるならハコフグ専門店で料理してもらうのが賢明だと思う。
自分で料理して食べるならあくまでも自己責任で。
ハコフグの姿焼き
ハコフグを食べたのはまだ若かりし頃。
その頃ハコフグの肉は無毒だと言われていた。
内蔵もなにも取らずに金網の上にハコフグを置き、そのまま時間をかけてガスで焼いた。
焼き上がったハコフグは原型そのままの黒い姿。
背中を押すと六角形の形に割れ、簡単に身をつまむことができた。
白身の味はそのまま普通に魚の味。
苦み、臭みもなく、上質な白身。
体の割には身が少なかった。
ハコフグのミソ焼き
ハコフグのミソ焼きは九州は長崎県五島列島で「かっとっぽ」と呼ばれる人気料理。
作り方は
- 表面をよく洗う。
- 腹の甲羅部分を切り取り、肝と肉を取り出し、他の内臓は取り除く。
- 本体は鍋代わりとして使うため内側もよく洗っておく。
- 肝と肉を包丁の刃でたたき、混ぜる。
- さらに酒、味噌、刻みネギを入れ、混ぜたものをハコフグの本体に戻す。
- 腹を上にして網のに乗せ、切り取った甲羅で蓋をしたら弱火で20分焼いて出来上がり。
ハコフグの肝は場所によってパリトキシンの毒が蓄積する。
現地で食用にしていない場所では食べない方が無難。
今食べるなら注意するところ
パフトキシンがついているかもしれない皮膚表面は水道水でよく洗う。
腹を切って、内蔵は除去しておいた方が安全。
肝を食べる地方もあるが食べない方が安全、特に奄美大島以南のハコフグは遠慮すべし。
世界最強の毒
マウイイワスナギンチャク
ハワイのマウイ島の浅い海域には世界最強の毒を持つマウイイワスナギンチャクが生息している。
イワスナギンチャクの仲間であるマウイイワスナギンチャクの持つ毒パリトキシンは世界最強でフグ毒の50~60倍。青酸カリの8000倍の強さ。
マウイイワスナギンチャクに触らなくとも、上を泳ぐだけで全身倦怠、筋肉痛と腹部の痙攣などを起こすことがある。
4cmほどのノウサンゴの子供に見えるマウイイワスナギンチャクがいる海へ入るなら、ウエットスーツ、ブーツ、グローブは必携。
マウイイワスナギンチャクを食べる魚
もしマウイイワスナギンチャクをエサとする魚を食べたら寿命はない。
現地ではハコフグやウミスズメの仲間、アオブダイ、ソウシハギを食べない方が安全。
ハワイでは他にもカスミアジやカンパチなどの大型のアジ科の魚にはシガテラ毒が存在する。