初トキシラズに感動

深水

9年ほど前に驚いたことがあった。

今はもうないのだが隣に深水という魚専門のこじんまりした良い店があった。

マスターとは何かある毎に行き来していた。

初夏に近いこの季節、仕事帰りに暖簾をくぐった。

築地から運んだ鮮度の良い魚が刺身になるべく並んでいる。

トキシラズ

ときしらず

いくつか刺身を食べた後、もう一品何か食べたいと思い焼き物メニューを見る。

そこに「ときしらず」の文字が見えた。

聞いたことがあるが食べたことがない。

マスターの説明によればめちゃくちゃ脂がのっている旨いサケだという。

秋鮭よりも全然脂が乗っていて食べられるのは今のこの時期しかないと言う。

ふ~ん、シャケか~。

ま~そんなにお勧めならお願いします。

トキシラズを焼いてもらった。

トキシラズは時鮭または時知不と書く。

秋に河口に集まるシロザケ

一般的に食べているサケは4~5年育ったシロザケ。

秋に産卵のために生まれた川へ遡上しようと河口に集まってくるものを海上の定置網などで捕って水揚げしている。

川に遡上したものは極度に味が落ちるため食用とされない。

雌の腹には産卵を目前に卵が育っている。

すじこといくら

サケの腹から卵を取り出す。

房の中に卵が入っている状態がスジコ、商品のスジコはイクラに利用できない小粒のものを塩漬けにした状態にして販売している。

大粒の卵は房をほぐして、一つひとつバラバラにしたものがイクラだ。

イクラはほぐした後に傷みやすいので独自に作った醤油ダレや塩などに浸けておくのが一般的。

時鮭は未成熟なシロザケ

トキシラズは秋鮭とは違う。

トキシラズが捕れるのは4月末から8月上旬まで、秋鮭とはシーズンが違う。

トキシラズは、ほとんどが卵や白子なども育っていない未成熟な2~3年のシロザケ。

ロシアのアムール川などで生まれてエサを求めて回遊してきたもので大きさもサケとしては大きくない。

大きさは2~5kgで、もっと小さいものある。

大人になるためにエサを沢山食べ成長中の少年~青年のサケだ。

脂の乗りは3~4倍

卵などの生殖器に栄養を取られていないので秋鮭の3~4倍の脂が乗っている。

産卵期近くになると魚は体の栄養分を卵や白子に取られ、体の脂が無くなり味は落ちる。

秋鮭はこの状態のものを水揚げしている。

トキシラズは美味い

トキシラズ

身が柔らかい

時間かけて焼かれたトキシラズの塩焼きが目の前に置かれた。

身は厚く、皮にこんがり焼き色がついて、なんとも上手そうである。

背側の綺麗なピンク色の焼身に箸を入れると固さをまったく感じずに身がほぐれた。

ほぐれた切れ目からは湯気が香りを包んで立ち上がる。

柔らか、脂乗りのり

口に入れてビックリした。

あれほど時間をかけて焼いたのに身が固くない、柔らかい。

それどころかなんだこの脂の乗りは!

まるでハラスを食べているような、マグロで言えばオオトロを食べているような脂の乗りだ。

それも腹ではない、背中の身のど真ん中の部分。

トキシラスは全体に脂が乗っていて見事な味。

こんなシロザケを食べたの初めてだった。

トキシラスを侮ってはいけない。

恐るべしトキシラズ。

その後、隣の浸水は引退し閉店、トキシラズを食べる機会は無くなった。

次にトキシラズを味わえるのはいつの日か?

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