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昔のサケは焼きジャケ、脂がにじみ出る皮の部分が旨い

昔のサケは焼きジャケが常食

焼ジャケは朝食のおかず

子供のころに食べたサケは焼ジャケ。

サケの刺身などは食べられなかった

サケフレークもない。

サーモンフライも知らない。

シャケバターなどの料理も聞いたことがない。

昭和中期に食べたサケは塩ジャケが全て。

サケは全部塩ジャケ

昭和中期まで、東北、北海道で水揚げされたサケは腐敗しないようにたっぷりの粗塩にまぶされた状態で東京へ運ばれた。

今のように冷凍技術も充実していない。

また発泡スチロールの箱も使われておらず、粗削りの木の板でできたトロ箱で運ばれた。

強く塩に浸かったサケを刺身で食べることはできない。

それ以外の料理にもしょっぱ過ぎて使えない。

生のサケや刺身のサケが使えるようになって今のサーモン料理の世界が広がった。

その時代、魚屋に並んでいたサケは塩ジャケの切り身だけだった。

塩ジャケは朝食のおかず

魚屋から買ってきた塩ジャケを表面の塩を手で払いそのまま網の上で焼く。

焼きジャケは主に朝食や弁当のおかずとなった。

昼めしや夕食のおかずに出てくることはあまりない。

弁当とおにぎりの具

今でもそうだが弁当やおにぎりの具として焼きジャケを使っていた。

しょっぱさが調度良いのと痛みにくい。

梅干し同様、昔からの定番。

その頃は焼きジャケ以外の料理を知らない。

1枚の焼きジャケを二人で分ける

皿にのった1枚の焼きジャケを兄と二人で分けて食べた。

中骨から上の背側部分と下の腹側部分と二つに分ける。

通常ならここで兄弟ゲンカが始まる。

魚肉が多いいのは背側の部分、腹側の部分は魚肉が少なめ。

兄は決まって背側を好んだ。

けれど私は腹側の部分が好きだった。

不思議とサケの塩焼きだけはケンカにならない。

お腹に旨み

しょっぱさの強い腹側。

脂がたっぷりの半身がなんとも言えない。

特に腹の先端の白い部分に脂が溜まっている。

口の中にいれるとサケの香りと旨みで満たされ、しょっぱさでご飯が進む。

今ではこの部分がハラスと呼ばれ、この部位だけでハラス焼きという料理になっている。

魚の焼き皮も美味い

皮の内側にも旨み

また焦げたサケの皮の内側にも脂がひそんでいる。

ここもご飯が進む旨い部分。

焼き魚を食べてる人が皮を残すのを時おり目にする。

その時にはいつも「もったいない、脂がのってとても旨いのに」とひとり愚痴る。

娘も最近まで魚の皮は残す人だった。

捨てるのはもったいないのでいつも貰って食べていた。

いくら旨いから食べろと言っても馬の耳に念仏。

ヒラメの炙り

ある日ヒラメを料理していた。

5枚におろし、半身は皮をひいて刺身に、残り半身は煮つけに。

皮は2本の金串に巻いて、軽く塩を振り炙ってパリパリにした。

酒のつまみにしようと皿にのせ、残りの料理を仕上げていた。

娘がちょうど帰ってきて料理を観察した後、皿の上に目を留めた。

「これなに?」

「ヒラメの皮、金串に巻いて塩を振って焼いたもの」

「食べてもいい?」

「いいよ」

と言ったら、「これ旨い!」と言って2本とも食べてしまった。

え~うそ。

皮だから絶対食べないと思っていたのに。

1本は残しておくと思ったのがあまかった。

パリパリに焼いた塩味で魚臭さはない。

皮と脂を焼いた香ばしい塩味。

日本酒にピッタリ。

残念な思いの中、彼女が魚の皮を初めて食べられたので良かったとあきらめた。

それから彼女は焼き魚の皮を平気で食べるようになった。

皮を美味しく焼く

焼き魚の皮は硬くて生臭い焼き方では不味い。

鱗は全て取り除き、時間をかけて皮から脂が滲み出てくるまで炙り、皮全体をパリッと焼ければ完璧。

ひと口食べれば誰でも皮が好きになる。

生臭くない香ばしい脂ののった皮焼きなら、ハラス焼きのように新しい料理名が出来るかも。