清流で魚の手づかみ

新型コロナウイルス感染で不満がいっぱい

今まで通り寝て、起きて、顔を洗い、洗濯をして、飯を作り、身づくろいをする。

しかし今までと違うのは、仕事もできず、釣りもできず、外遊びもできず、収入も無い日々が続く。

5/6までは我慢すると決めたがこんな生活がいつまで続くのか?

きっと今みんなが抱えている不満と疑問。

新型コロナウイルス感染の恐ろしさは患者と医療関係者だけでなく、耐えて我慢する人の心も蝕んでいる。

海に潜ることもできず、魚を釣ることも出来ないので昔話を想い出そう。

夏休みは橋本屋

初めてウナギを手づかみで獲ったときは小学生時代。

場所は父親の生家「橋本屋」、群馬県藤岡市の山中、隣には鮎の棲む清流が流れている。

橋の袂にある「橋本屋」は当時雑貨屋を営んでいた。

藤岡の町から1時間車で入った山中の村、周囲には店らしい店は無く、ほとんどのものを橋本屋で売っていた。

畑の作物の種、麦わら帽子、サンダル、調味料、魚、刺身、缶詰、酒、ビール、ジュース、お菓子、駄菓子、アイス、タバコなど。

飲み屋も無い山中、酒を飲ませ、つまみも出していた。

東京に住んでいた頃、夏休みに橋本屋へ泊りに行くのが何よりも楽しみだった。

アユの棲む川で手づかみ

隣の清流にはアユ、ハヤ(ウグイ)、カジカ、ヤマメ、シマドジョウ、ウナギ、サワガニ、カジカガエル、ツチガエルが棲んでいた。

朝食の後は決まって魚取り、橋の上流を攻める。

昼飯の後はもちろん魚取り、橋の下流を攻める。

道具はいらない。

もっとも原始的な方法。

漁法は手づかみ。

釣りも楽しいが魚の手づかみを覚えてしまうと病みつきになった。

魚は流れの中を泳いでいるだけではない。

魚がいるのは石の下

流れの強い場所の石影で体を休めている。

体を休めながら流れてくる虫(エサ)を待っている。

清流の川には大き目の石があり、石の下には魚が入れる隙間、つまり穴がある。

この穴は1つでなく、入口と出口というように2~3個開いている。

魚の手づかみは石をつかむ

その穴に素手を入れる。

まず最初に穴がいくつあるか確かめてから大きい穴から片手を入れ、もうひとつの穴も同時に手を入れ蓋をする。

三つ目の穴があれば足で塞ぐ。

片手だけを奥に伸ばし、魚の有無を確かめる。

魚は手を伸ばせば逃げて奥の壁に張り付く。

指の感触に魚の肌が伝わったらゆっくり手の平に誘い込む。

最初は何回も逃げられた。

石の下に穴がいくつもあることを知らなかった。

何回も他の穴から魚に逃げられた。

それから最初に穴の数を確認するようになった。

手を穴に入れ、他の穴は塞ぐ。

そして魚を穴の奥へ追い込む。

触れば魚の状態が解る

ここまでは第一段階、難しいのは魚を手の平に誘導する方法。

魚はきつく触れば逃げないが力を揺るめれば直ぐにでも逃げだす。

コツは文字では伝えられない。

やがて触っただけでハヤかカジカか判断出来るようになった。

ハヤは柔らかく細かい鱗がある。

カジカの表面は粘質で表面は柔らかいが真は硬い、鱗は感じられない。

特にカジカは美味い。

川魚よりも海魚の方が一般に脂がのって旨いと思う。

けれどカジカとウナギだけは川魚でも特別美味い。

島と暮らす

初めてのウナギ獲り

いつも魚のいる六角石

清流の中でいつ行っても魚がいる特別な石があった。

午前獲っても午後にはまた魚が入っている石。

今日獲っても明日また魚が入っているという不思議な石だった。

形が六角形だったので六角と呼んでいた。

六角の下には4つの穴が開いていた。

よほど魚にとっては棲みやすい家だったのだろう。

カジカより大きい

暑い昼下がり六角の下に手を入れると魚の感触が伝わってくる。

今日もまた魚が入ってる。

やっぱり六角は他の石と違うと感心しながら他の穴を塞ぐ。

このヌメヌメ感はカジカか?

それにしては下の方が柔らかいような?

さらに時間が経つとやや大きいことが解った。

これカジカじゃなく大きい!

ハヤより大きい!

ウナギかも?

もしかしてウナギかも?

ウナギなら手づかみでは無理だ。

ヌルヌル滑って指の間を抜けていく。

絶対逃がしたくない。

けれど今の状態では捕まえるのは無理。

手づかみは無理。

応援を呼んだ。

手づかみは無理だからサデ網を使おう。

サデ網を使う

その時サデ網は岸に置いてあった。

サデ網とは大きさ1メートルほどの半楕円形の大型の玉網のようなもの、柄はついていない。

底面を水底に這わせて半楕円形を上にして使い、袋網の奥行き1メートルほどある。

このサデ網をひとつの穴の出口に設置した。

穴から上流側に逃げたらアウト、負け。

下流に逃げたら網に入る。

一か八かの掛け、他にウナギを獲れる方法は見つからない。

出口の穴を開け、他の穴は閉じたまま。

ウナギを圧迫している力をゆっくり弛める。

すると待っていましたとばかり指の先から逃げ始めた。

出口の穴に向かって動く魚信、ズルズルと続く。

その感触は長い魚、ウナギだと確認できた。

黒い影が出口から出てきた。

川面を揺らす黒い影は長い帯のように流れと共に下流へ泳いでいった。

ウナギがサデ網に入った

帯がサデ網に吸い込まれると直ぐに引き上げ、慌てて岸まで川中を走った。

岸に辿り着いても足をゆるめず岸から10メートル以上陸に上がってから足を止めた。

こうでもしないとウナギが逃げてしまうような気がした。

網の大きさは1メートル、ウナギの大きさは60センチほど。それでも逃げられるような感じがした。

サデ網の中を見ると背中の黒い見事なウナギが八の字になって入っていた。

綺麗な背の黒に弾力性のある腹の白。

ウナギが獲れたのに満足して笑みを浮かべながら眺めていた。

すると急に暴れだした。

暴れて逃げたウナギ

予測できない他の魚には出来ない暴れ方だった。

なんとサデ網の中でウナギが一直線に立ち上がって網から飛び出した。

自分の長さ以上のある網を立って登って逃げたんだ。

陸地を這うウナギは川へ向かっている。

体をくねらせ一目散に逃げる。

早い、やばい、このままでは逃げられる。

何度やっても暴れるウナギを素手ではつかめない。

またサデ網を使って中に誘い入れた。

砂だらけになったウナギは疲れたのかサデ網の中で静かになった。

ウナギのパワー恐るべし

そしてまた暴れだした。

今度は小さな網の目に尾の先をグイグイ入れていく。

絶対通れない小さな網の目が最後には5倍以上の大きな網の目になっていた。

もう少し時間があったらこの網の目から逃げていた。

あのとき川の中でサデ網のウナギを見ていたら確実に逃げられた。

川岸でもダメ、5メートル陸地に上がっても逃げられていた。

ウナギの秘められた運動能力に驚いた。

ウナギのパワーは凄い。

他の魚とは違う、栄養が豊富、スタミナがつくというのも頷ける。

今でも綺麗な川に入ると石の下に手を入れたくなる。

アガリクスα誕生