冷たい雨に濡れた捨てられた猫

冷たい雨の夜は子猫を思い出す

空は暗い灰色、冷たい雨。

6年前のことを想う。

あの日もこの季節こんな雨の夜。

底冷えの音がする。

暗い雨の夜

雨の中、犬を連れて夜の散歩に出かけた。

辺りは真っ暗で冷たい雨の闇。

家から出てまだそう遠くもない近隣の家。

おかめ笹の植え込みの中を犬が頭を突っ込んで何か気にしている。

引っ張ても動かない。

何があるのか?

覗き込むと手のひら大の小さな箱がある。

その中からミーミーと声が聞こえる。

最初、傘にあたる雨音で気がつかなかった。

捨てられた産まれたばかりの子猫4匹

箱を開けるとそこには雨に濡れた4匹の産まれたばかりの子猫が入っていた。

目は閉じたまま、まだ猫の形にもなっていない。

毛も薄く、へその尾もついたまま。

誰が捨てた?

なぜ捨てた?

なんでこんなところへ捨てた?

連れて帰ってやりたいが私に看病は出来ない。

育てることも出来ない。

惨いことだが何も出来ずその場を去った。

犬はかなり抵抗したがなす術がない。

家に戻る

捨て猫のことを娘に話す

家に戻ると娘が帰っていた。

言わなければ良いものを今あった出来事を話した。

彼女は直ぐに立ち上がり、家を出て行った。

数分後に戻ってきた彼女の両手にはミーミーと泣く濡れた箱。

やっぱり連れて帰っちゃった

「どうするんだ?」

「看病する!」

彼女は獣看護師の資格を取るために大学に通っていた。

黙ってられないのは無理もないか。

「元気になったらどうするんだ。家では飼えないぞ!」

「大学に連れて行く!」

フー。

後は黙って見ているしかない。

捨てられた子猫看病

寝ずの子猫看病、はじまる

彼女は手際よくタオルで4匹の体を拭くと、乾いたタオルを下にひき4匹をくるんだ。

お湯をペットボトルに入れ、タオルを巻いて湯たんぽを作り一晩中温めた。

ミルクを温め、湿らすように口から与えた。

時に体をさすり元気づけた。

翌日、病院へ

彼女は一睡もすることなく朝を迎え、4匹を犬猫病院へ連れて行った。

私は仕事へ出かけ、帰るまで状態は解らなかった。

帰宅後に話を聞くと、獣医の話では助かるか助からないかはミルクを飲んで体重が増えるかどうかだという。

小さな哺乳瓶とデジタルの重量計も用意されていた。

この夜、一番体の小さかった1匹が息をするのを止めた。

3日目の子猫

3日目の朝、起きると彼女は2日連続で徹夜をしていた。

ペットボトルがぬるくなると湯を足した。

時間ごとに少量でも良いからミルクを飲んでくれと口元へ近づけた。

元気を出せと体をさすって温めた。

けれど動くことができる子猫は1匹だけになっていた。

その1匹も昨日まではミルクを少し飲んだが今日はほとんど飲まないという。

生まれた時に母猫から最初のお乳を飲んでいれば助かるかもしれないが飲んでいなければ難しいという話をした。

そして2匹は動かなくなった。

子猫最後の1匹

その日の夕方最後の1匹も息を引き取った。

ネズミより小さなからだの4匹の子猫は冷たく硬くなっていた。

4匹の遺体は家の前にあるクヌギ林の根元に埋めた。

彼女には「よく頑張った」としか言えない。

こんな冷たい雨の夜に思い出す。