スズメバチ女戦士マリア

この季節、彼女は産まれた

この時期になると思い出す。

彼女の名はマリア。

短い人生を終わる最後は天へ飛んで昇った。

戦士になるために

彼女が生まれたのは狭い繊維質の部屋。

生まれた後は産んでくれた母親と姉たちが食事を運んでくれた。

マリアの食事は虫の肉団子。

肉団子を腹いっぱい食べると何故だかゲップと一緒に口から蜜が出た。

その蜜を姉は喜んで飲んだ。

やがて幼虫からサナギへ。

彼女が部屋を出る頃には大人の体になり、たちと同じように空を飛ぶ戦士となる。

風の中の出会い

彼女に出会ったのは「風の中のマリア」。

そういう名の小説だった。

彼女はスズメバチ。

宿命

生まれたときから戦士として働き蜂の宿命をおっていた。

働くスズメバチの戦士は全員メス。

スズメバチの卵は受精すればメスに、受精しない無精卵はオスに育つ。

メスは働き蜂となってエサを狩りに行く。

捕った獲物は子供たちに与える。

また働き蜂は巣も増築する。

マリアは性活動をしない

産卵行動は女王蜂に任せ、マリアは交尾をしない。

女王蜂が死ぬとマリアも産卵するようになる。

しかし交尾をしないマリアはオスになる無精卵しか産めない。

マリアたちが産む無精卵から孵ったオスのハチは何もしない。

狩りも、子育ても、巣作りも、何もしない。

結果、巣には働き蜂がいなくなり損壊する。

女王蜂は女王であり王でもある。

マリアたちがすべて

スズメバチの生活はマリアたち女戦士にかかっている。

マリアは巣を飛び出し、獲物を狩る。

狩りの獲物はイモムシや蝶、バッタ、ハエ、アブなど食べられる昆虫ならなんでも捕らえる。

捕らえた獲物をマリアたちは食べない。

強い歯で噛み砕いて唾液と混ぜて肉団子をつくり巣に持ち帰り幼虫のエサとして与える。

彼女たちの細い胴を肉団子は通過できない。

マリアの食料は幼虫の出す蜜

彼女たちが食するものは幼虫が出す液、甘い蜜。

肉団子を与え甘い蜜をもらう。

マリアも幼き時代にはこのように肉団子をもらい蜜を出していた。

夏は良い。

獲物も沢山ある。

巣から遠く離れずとも獲物を捕る

大きくなるスズメバチの巣

9月から狩りが厳しくなる

9月末、セミの声が遠ざかる。

飛び交う蝶やトンボも少なくなる。

そして10月さらに獲物が減る。

巣の近くには獲物がいない。

巣は大きくなり、子供たちも多くなり、働かないオスも増える。

食料がさらに大量に必要。

少なくなるエサ

そんなときマリアは気が荒くなる。

エサが捕れないため遠出も必要。

日帰りができないことも覚悟で遠方へ狩りに出る。

当然、腹が減る。

マリアは巣に戻れないため幼虫の蜜をもらえない。

マリアの非常食は木の樹液だけ。

カブトムシやクワガタ、カナブンが好む樹液がマリアの非常食。

ハチの巣を狙う

今まで相手としなかった他のハチの巣を狙う。

ミツバチの巣を仕留めれば大量の食料が手に入る。

マリアからしてみればミツバチは簡単に倒せる相手。

首を頑丈な歯で噛み切れば良い。

ミツバチの毒針もマリアの硬い体には刺さらない。

ただ沢山のミツバチに囲まれることは避けたい。

蒸されて体温が高くなり死に至る。

そしてマリアは戦った。

このミツバチの巣でも勝った。

獲物の少なくなったこの季節、大量の幼虫をエサにできた。

数々の戦いでマリアの体は傷ついた。

羽もだいぶ痛めた。

マリア最後の戦い

獲物の少ない秋

それでも腹を減らした子供たちのためマリアは狩りに出る。

日の時間も夏に比べると短くなった。

朝方は寒い、陽が暮れれば気温が下がり体の動きも鈍くなる。

巣の近くには獲物はない。

今日の遠出も仕方ない。

山を二つ超えたが獲物は見つからない。

切れた羽が痛々しい。

強敵オオカマキリ

そこにヤツがいた。

オオカマキリだ。

今までは相手にしなかったヤツ。

あのオオカマで挟まれたら命取り。

けれど今は、やるしかない。

そしてヤツも同じだ。

エサとご無沙汰でだいぶ気が立っている。

ふふふ。

面白いじゃないか。

2本のオオカマをふりかざすオオカマキリ・・・・・

この戦いにもマリアは勝った。

羽もボロボロに傷んだ。

最後の相手は太陽

もう巣まで帰る力は残っていない。

傷付いた羽でマリアは飛んだ天高く。

青空の向こうの太陽に戦いを挑む。

何処までも何処までも力いっぱい羽を動かす。

急に目の前が真っ白に、そして意識が消えた。

 

この時期になると思い出す。

スズメバチのことを知った「風の中のマリア」。