冷たい雨の夜と4匹の子猫 378

冷たい雨

冷たい雨の日に思い出す

空は暗い灰色、冷たい雨が降ってきた。

6年前のことを想い出す。

あの日もこの時期、こんな雨の日だった。

ある雨の夜

雨の中、犬を連れて夜の散歩に出かけた。

辺りは真っ暗で冷たい雨だけが降っている。

家から出てまだそう遠くもない近隣の家

おかめ笹の植え込みの中を犬が異常に気にして頭を突っ込んでいる。

引っ張ても動こうとしない。

何があるのか?

覗き込むと手のひら大の小さな箱がある。

その中からミーミーと声が聞こえてくる。

最初、傘にあたる雨音で気がつかなかった。

捨てられた産まれたばかりの子猫4匹

箱を開けてみるとそこには雨に濡れた4匹の産まれたばかりの子猫だった。

目は閉じたまま、まだ猫の形にもなっていない。

毛も薄く、へその尾もついたままだ。

誰が捨てた?

なぜ捨てた?

なんでこんなところへ捨てた?

連れて帰ってやりたいが私には看病も出来ないし、育てることも出来ない。

惨いことだが何も出来ずその場を去った。

犬はかなり抵抗したがなす術がない。

家に戻る

娘に話す

家に戻ると娘が帰っていた。

言わなければ良いものを今あった出来事を話した。

彼女は直ぐに立ち上がり、家を出て行った。

数分後に戻ってきた彼女の両手にはミーミーと泣く濡れた箱があった。

やっぱり連れて帰っちゃった

「どうするんだ?」

「看病する!」

彼女は獣看護師の資格を取るために大学に通っていた。

黙ってられないのは無理もないか。

「元気になったらどうするんだ。家では飼えないぞ!」

「大学に連れて行く!」

フー

後は黙って見ているしかない。

看病

寝ずの看病、はじまる

彼女は手際よくタオルで4匹の体を拭くと、乾いたタオルを下にひき4匹をくるんだ。

お湯をペットボトルに入れ、タオルを巻いて湯たんぽを作り一晩中温めた。

ミルクを温め、湿らすように口から与えた。

時に体をさすり元気づけた。

翌日、病院へ

彼女は一睡もすることなく朝を迎え、4匹を犬猫病院へ連れて行った。

私は仕事へ出かけ、帰るまで状態は解らなかった。

帰宅後に話を聞くと、獣医の話では助かるか助からないかはミルクを飲んで体重が増えるかどうかだという。

小さな哺乳瓶とデジタルの重量計も用意されていた。

この日、体の一番小さな1匹が息をするのを止めた。

3日目

3日目の朝、起きると彼女は2日連続で徹夜をしていた。

ペットボトルがぬるくなると湯を足した。

時間ごとに少量でも良いからミルクを飲んでくれと口元へ近づけた。

元気を出せと体をさすって温めた。

けれど動くことができる子猫は1匹だけになっていた。

その1匹は昨日まではミルクを少し飲んだが今日はほとんど飲まないという。

生まれた時に母猫から最初のお乳を飲んでいれば助かるかもしれないが飲んでいなければ難しいという話をした。

最後の1匹

その日の夕方最後の1匹も息を引き取った。

ネズミより小さなからだの4匹の猫は冷たく硬くなっていた。

4匹の遺体は家の前にあるクヌギ林の根元に埋めた。

彼女には「よく頑張った」としか言えなかった。

こんな冷たい雨の日に思い出す。




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