江之浦のワカメ養殖今年も断念
江之浦ワカメ冬の海水温が高くて育たない
褐色の生ワカメ
2月末にもなれば水温も下がり、あちらこちらでワカメが育つ。
毎年ここ神奈川県小田原市江之浦港ではワカメの養殖をしていた。
ワカメ漁があると漁師から直接ワカメを購入できた。
穫れたての生ワカメは褐色で香りも強くアルギン酸も豊富に含まれる。
エメラルド色のワカメ
一緒にいた友人たちと分けて持ち帰り、それでもまだ十分過ぎる量がある。
近隣の人たちにもお裾分け。
家ではワカメパーティーを開く。
大きな鍋にたっぷりの湯を沸かし、生ワカメ一株を沸騰した湯の中に入れる。
瞬時に綺麗な緑色に変わる。
エメラルドのようにツヤのある緑色は海から生まれた宝石のよう。
ワカメの刺身
茹ですぎないように直ぐに真水で冷やし、適当な大きさに切ってワサビと醤油を用意すればワカメの刺身の出来上がり。
茹でたての生ワカメは厚みと歯ごたえがあり、ワカメの香りも濃い。
今まで食べていた塩蔵ワカメやカップみそ汁と違うことにビックリ。
それまでは生のワカメを食べたことが無かった。
生ワカメと食べ比べると雲泥の差。
今までのワカメがまるで味も香りもない紙のように感じる。
ワカメどんぶり3杯分
茹でた一株のワカメはどんぶり3杯分。
マヨネーズをかけて食べ、酢醤油で食べ、ドレッシングで食べる。
満足ゆくまでワカメを楽しむ。
食べられなかったワカメはそのまま冷蔵庫で保存。
翌日は美味しい味噌汁の具になる。
ワカメを多く食べた翌朝はお通じスッキリ。
女性も喜こぶワカメ。
ワカメの天ぷらは要注意
ワカメの水気をキッチンペーパーで取った後、溶いた薄力粉を着けて低温の油で揚げればワカメの天ぷらが出来る。
ワカメの天ぷらはカリカリの衣に覆われた板状で塩を掛けて食べる。
サクサクでお菓子のような感覚。
高温の油は危険
くれぐれも高温の油では揚げてはいけない。
水分を多く含んだワカメを高温の油の中へ入れると跳ねるというより爆発するような状態になる。
大変に危険。
辺り一面に高温の油が飛び散り、余計な仕事が増える。
腕にはヤケドの跡が残る。
そんな美味しいワカメをここ数年食べていない。
養殖ワカメが育たない
水温が下がらない
理由は冬場に下がる海水温があまり下がらない。
江之浦のワカメ養殖は地元の漁師によって行われ、小田原の名産にもなっていた。
ワカメは冬育つ海藻。
関東の夏にはワカメは枯れて跡形もない。
ワカメの養殖
江之浦では水温が18℃以下に下がる11月中下旬にワカメの養殖が始まる。
タコ糸に着けたワカメの胞子を専門業者から入手する。
胞子の着いたタコ糸を3cmほどに切り、メインロープの隙間へ数十センチごとに割り入れる。
非常に手のかかるこの作業は一家総出。
短時間で終わらせる。
沖のブイに浮かべる
水深のある沖合いにブイを設置。
一定間隔にそのワカメロープを水面近くに張る。
ワカメは深度6mよりも浅い場所に繁茂する海藻。
岸近くの浅瀬にワカメロープを張らず、沖合に設置する。
浅瀬にワカメロープを張ると若芽をベラやアイゴ、メジナ、ボラなどの魚が食べてしまう。
水深30mほどの水面に張れば、そのような心配がなくなる。
環境の良い沖の水面
水深が深くてもワカメロープが水面にあれば浅瀬と同じように光合成が出来るのでワカメは育つ。
沖に張ったワカメロープは外敵のいない場所で豊富なミネルラルと水分、そして適度な太陽の光を受ける。
3月に入り1メートル以上の大きさになると水揚げが始まる。
ワカメの水揚げ
ワカメを切り取り、水揚げすると釜で茹でて塩漬けにし「塩蔵ワカメ」として販売。
他には洗濯物のように乾して「干しワカメ」として販売。
値段も安く、味も良く地元住民にも人気のあったワカメ。
5年前
5年前のある年にワカメが育たなくなった。
水温が1月にはいっても18℃あり、今までより高い。
例年なら16℃まで下がる。
その年水温が16℃まで下がったのは2月。
3月に入って水揚げされたワカメは育ちが悪く、小さく薄い、量も少ない。
これでは売れない。
翌年、漁師はもう一度胞子の着いたワカメロープを張り、養殖を試みた。
結果は同じ。
それからは江之浦の周辺の漁師はワカメ養殖を止めた。
胞子の着いた糸を入手するにも、沖にワカメロープを張るにも手間と経費が掛かる。
2年間の不作で諦めた。
若芽がでるのは3月
そして今年も江之浦の水温が16℃まで下がったのは2月中旬。
さらに水温の低下が遅れた。
地球の温暖化の影響は近くの海にも現れている。
以前、天然のワカメが姿を見せたのは1月の正月明け。
まだ5~10cmほどの若芽が浅瀬の岩場に着き始める。
ここ数年は3月上旬にならないと若芽を見つけられない。
それも少量。
2ヶ月も遅れている。
発育の十分出来ないワカメは4月になれば先端から枯れていく。
今年も生ワカメを食べれないのが淋しい。