月にウサギがいるのは、神に身を捧げたウサギ

月のウサギ

望月

神々しい満月を眺めていると本当にウサギが見えてくる。

月に黒く見える陰影がウサギの餅つき姿。

1匹のウサギが臼を突く。

今日は満月

電気の無い時代、夜は月明りが頼り。

いにしえの人の思いを感じる。

でも月でウサギが餅をついていると最初に言ったのは誰?

インドの森での物語

サルとキツネとウサギの物語

木登りの上手なサルと狩りの得意なキツネと穴掘りの好きなウサギが3匹仲良く一緒に暮らしていた。

3匹はいつも同じ不満を抱いて日々を送っていた。

「なんで俺たちは人間ではないのだろう」

「なんで獣の姿なんだろう」

「人間のようになりたい」

来る日もくる日も人間になることを夢見た。

けれど水面に映る自分の姿が変わることはなかった。

3匹の決め事

あるとき1匹が言った。

「前世で何か悪いことをしていたんじゃないか?」

「だから獣の姿なんじゃないのか?」

「せめてそれなら良いことをしよう」

「これからは人に会ったら役に立つことをしよう」

「うん、そうしよう」

サルとキツネとウサギの3匹はこのように話し合い、人間に役立つことをすると決めた。

帝釈天の耳に届いた

それを天で聞いた神のひとり帝釈天は何か良いことをさせてあげたいと考えた。

帝釈天は老人の姿になり3匹の前にあらわれた。

老人は疲れ果てた姿をしていた。

「お腹がすいて動けない。何か食べ物をめぐんで欲しい。」

何も知らない3匹は老人の言葉を聞くと、やっと役にたつことが出来ると大喜び。

3匹の食べ物捜し

3匹はそれぞれ老人のために食べ物を捜しに出かけた。

木登りの上手なサルは高い木の上に登り果物や木の実を取ってきた。

狩りの得意なキツネは川に行って魚を捕まえてきた。

ウサギは野を走り、穴の中を捜したが自分が食べている雑草しか見つけられない。

結局、一生懸命頑張ったのにウサギだけは食べる物を何も持ってくることが出来なかった。

サルやキツネが持ってきた獲物を見てウサギは申し訳なく、悔しくて仕方がなかった。

悩んだウサギ

「もう一度食べ物を捜してくるから料理できるように火を焚いて待っていて欲しい。」

そしてウサギはもう一度食べ物を捜しに出かけた。

けれど、食べ物はなかなか見つからない。

捜しても、さがしても・・・

暫くしてあきらめたウサギは何も持たずに帰ってきた。

責められるウサギ

「食べ物を何も持ってないじゃないか!」

「うそつきだ!」

サルとキツネに責め立てられウサギは泣きながら悩む。

皆との約束を守れない。

老人に渡す食べ物もない。

身を捧げる

泣きながら悩み、悩んだ末にウサギは焚き火の中に身を投じる。

「私には食べ物を見つけることができません」

「食べ物を捕ることができません」

「どうぞ、私を焼いて食べてあなたの役に立ててください」

ウサギは老人のために身を捧げた。

帝釈天が月に連れて行く

驚いた老人はすぐに帝釈天の姿に戻り、焦げて死んだウサギを抱きかかえる。

「ウサギよ!お前の優しい心はよくわかった。

今度、生まれ変わる時はきっと人間にしよう。

それにしても可哀そうだ。

皆に見えるよう月にウサギの姿を永遠に残してやろう。」

帝釈天は焼けたウサギの体を月に連れていった。

それから月にはウサギの影が写るようになった。