タイドプールでツバメコノシロ発見
タイドプール(潮だまり)観察
タイドプール
1年に1度のタイドプール(潮だまり)観察。
深度の違いからダイビングでは見られない魚もいる。
稚魚も多く生息する。
小さなタイドプールに小さな世界がある。
時合いは大潮の干潮時
安物の玉網2つと片手にバケツを持てば準備はOK。
後は潮汐を調べ、大潮の潮が一番引く時間帯を狙ってタイドプールへ出かける。
毎年続ける観察は30年近くになる。
オリンピックと緊急事態宣言都市
いつものように磯につくとまだ潮は満ちている。
コロナ禍の影響で昨年は閉鎖されていた。
今年は人の出入りもあり、海に遊ぶ人も多い。
オリンピックが開催されるのに緊急事態宣言と言われても、外出せずに自宅自粛出来ない気持ちは良く解る。
通常なら海底の一部
今日は南風弱く凪、水面に波は無く板のように沖へ続く。
昼メシ用のトン汁を作り終える頃、潮は引いた。
いつもの浅瀬を渡り外海に近いタイドプールにでる。
通常なら海底の一部になっている場所。
外洋に続く水路から水が入ってくる。
さざ波で水底が見えない。
動かず静かに見る
岩になり動かず静かに待つ。
再び鏡のような水面に戻るとタイドプールの住人が動きだす。
緊張が溶けたように魚は動く。
穴の中ら這い出すコケギンポ、岩陰に隠れていたクモハゼ、ナベカ、ベニツケギンポ、ヘビギンポ、アナハゼが出てくる。
イソスジエビは透明の体を武器に水底を這いまわる。
インベーダーのような姿で中層を泳ぐものいる。
すると見かけぬ姿が目に入る。
知らない魚に心おどる
黒い小さな魚体
異常なほどにヒレを左右に振る。
泳ぐというよりダンスを楽しんでいるようにも思える。
コショウダイの子供の泳ぎに似る。
疲れ知れずの腰ふりダンス。
意外と泳ぎは速く簡単には捕まらない。
何度も逃げられて見失った。
2時間後、4回目のチャンスでやっと玉網の中に入れることが出来た。
バケツに入れてもヒレの動きは続く。
魚の特徴
体が黒くハッキリ見づらい。
胸ビレは大きいが何ヵ所も切れ、破れたコウモリ傘のよう。
割れた胸ビレを広げ、切れ込む尾ビレ。
さっそく観察容器へ移し横顔が見たい。
過去にこの魚を見た記憶がない。
初めて見る魚
珍しく気持ちが踊る。
容器に入れても5cmほどの黒い魚体はヒレを左右に動かし続ける。
わからない。
この魚がわからない。
魚の名前がわからない。
似た魚の想像もつかない。
しいて言えば深海魚?
カタクチイワシのような顔
顔は面白い形をしている。
真ん中にあるべき口はなく下側についている。
それも大きく目の下まで裂ける。
下アゴがないようにも見える。
カタクチイワシに似た顔。
尾ビレは矢じるし
尾ビレは長く、他の魚よりも奥まで切れ込んでいる。
矢じるしのよう。
ツバメタナバタウオに尾ビレが似ている。
胸ビレを大きく広げている。
色も形も違うがヒオドオシベラの子供が似ているか?
アゴの下に白いヒゲ足
アゴの下に細い白いヒゲのようなものが4~6本見える。
ホウボウのように歩くわけではない。
きっとこのヒゲが敏感な器官でエサを捜すのに役立つ。
開いたり閉じたりも自由。
名前がわからない
やはり名前がわからない。
悩み続けて11時間。
夕飯も終わり、焼酎をチビチビと飲む。
瓜生なら知ってるかも
スマホを片手に電話する。
瓜生知史は学生時代の友人。
若い頃は伊豆海洋公園のstaff。
カメラマン中村宏治氏のアシスタント、水中カメラマン、現在伊東の伊豆高原でDSマリンライフナビゲーションで水中ガイドをしている。
著書に図鑑「伊豆の魚」、「魚はエロい」がある。
久しぶりの挨拶のあと、魚の特徴を伝えると即答だった。
「ツバメコノシロ」とかじゃなくて?
知らない魚の名前はツバメコノシロ
ツバメコノシロ
ググルとそれらしい写真が出てきた。
撮影した写真を送ると「間違いないね。へえ~子供は黒いんだね。」だった。
「珍しい魚じゃなくて一般魚」。
なぜツバメコノシロを知らない?
ダイバーが潜る水深よりも浅い場所、水深1~2mの場所にいるのでダイバーで見る人がいない。
砂地、砂泥地の水底、時には河口や川に生息する。
大きさは45cmになり熱帯域、亜熱帯域に分布する南方系の魚。
瓜生の図鑑、伊豆の魚にも載っているがホゲのように見える胸鰭遊離軟条が見えないショボイ写真だから解かりにくいと説明。
その後、他の図鑑にも色と雰囲気の違う成魚の写真は載っていた。
関東の魚屋には並ばない。
こころ踊る知らない魚
何か久しぶりに心踊る、名前の知らない魚。
一時は新種か?
深海魚か?
などと想像したがやはり周知されていた一般魚。
まだまだ海は広い。