小型クロマグロ漁獲越え 道南14漁協苦渋の全て逃がす
小型クロマグロの漁獲越え
太平洋クロマグロ
国際自然保護連合では絶滅危惧種に指定されているクロマグロ(別名:本マグロ)。
全長3m、体重400kgになり、生後5年で精成熟する。
1960年に比べると20%しか生息しないと推測され、資源量を回復させたいと世界的に漁獲枠を設けるなどの努力がされている。
30kg未満は子供
そこで大人のクロマグロの漁獲量の制限と30kg未満の子供のクロマグロの漁獲量も制限している。
30kg未満のクロマグロは魚としては大きいがまだ未成熟、ゆえに子供を作れない。
30kg未満の子供のクロマグロは中坊、さらに小型はメジマグロと言われる。
メジマグロも食用として漁獲したり、養殖用として生きたメジマグロを業者に売り渡している。
網を上げて捕れたメジマグロは逃がしても死んでしまうため、止む無く水揚げしている部分もある。
漁獲枠を超える
日本の年間のクロマグロの上限枠は8千889トン、そのうち小型クロマグロ枠は3千423トン。
昨年7月から今年6月までの沿岸漁業の水揚げ量は4月末で漁獲枠の水揚げ量を越えてしまっている。
特に北海道南部の定置網に入る小型クロマグロの漁獲枠オーバーが目立って多い。
越えた分は、次の漁期の漁獲枠から差し引かれるがいつまでも終わりのないイタチごっごしていてはおさまらない。
日本の水産庁も厳しい対応を求めている。
どうする?
道南の14漁協の自主規制
苦難苦渋の答え
北海道南部の道南の14漁協でつくる渡島定置漁業協会が答えを出した。
定置網でクロマグロの小型魚(30kg未満)を取りすぎた問題について。
次回の漁期2018年7月~来年6月の期間に定置網に小型のクロマグロが入った場合、小型クロマグロ全てを海に戻す方針を固めた。
これに対応するという事はどのようなことがおきるか。
定置網は、待ち伏せ型の漁法。
魚の種類を選んで網を張ることはできない。
ゆえに網に入る魚を選ぶことも出来ない。

大量の小型クロマグロいれば全て逃がす
定置網を引き上げる際に小型クロマグロ(30kg未満)が大量に確認できた場合は網を引き揚げるのをあきらめ、網を開き小型クロマグロを海へ放流する。
この時にサケやマス、ブリなど他の魚も漁網の中に入っているが選別して水揚げすることは難しく全ての魚を海に戻す。
数匹の小型クロマグロの場合は、1匹々網ですくい上げて海へ逃がす。
定置網のタイプによっては開放できなものもある。
そのような開放出来ない定置網タイプは水揚げを一時止め、網外へ小型クロマグロが泳ぎ去るまで数日間待つというものだ。
この対策は、北海道の道南14漁協の代表者に説明し、理解を得た。
漁師にとっては苦渋
とりあえず形は示した。
上手くいくかどうかはやってみなくては解らない。
今後、小型クロマグロが定置網に入っていると網上げ出来ないだけでなく同時に入ったサケ、マス、ブリまで放流することになる。
定置網漁をする道南の漁師にとっては大変な労働。
小型クロマグロだけ逃がす新型定置網の開発
混獲する定置網
定置網は待ち伏せ型の漁法で大小様々な魚を混獲してしまう。
網に入る魚を選ぶことも出来ない。
かと言って漁を止めることも出来ない。
しかるべき対応が小型のクロマグロが定置網に大量に入った場合は網を開き全ての魚を逃がすと言う苦渋の選択。
画期的な定置網
その矛盾に対応すべく東京海洋大学漁具漁法学の秋山准教授らのグループが画期的な新しい定置網を開発した。
このグループは2014年からこの新しい定置網の研究を続けていた。
大きく注目したのは定置網に入ったクロマグロは中央部分に集まり円を描くように泳いでいること、そしてブリなどは中央ではなく網に沿って泳ぐことだった。
定置網の中央部分にもう一つ円形の網を張る。
中央円形の網目は大きくし30kg以下のクロマグロはすり抜けて逃げられるようにした。
これによって中央円形の網には大型のクロマグロしか残らない。
また定置網の入り口と反対には出口になる開放部分を作り、対象とならない小型クロマグロが逃げられるようにした。
ブリに関しては網に沿って泳ぐ習性を利用した金庫網を作った。
網に沿って泳ぐと自動的に金庫網へと入ってしまう。
これを上手に利用出来れば小型クロマグロを効率よく逃がしながら目的の魚を水揚げ出来る。
実際の導入には、道具の準備などまだ時間がかかりそう。