カジメが無くなったのは台風でカジメの葉部が千切れ、その後魚に食べられたため

エサであり棲家で産卵場の海藻カジメ

海藻カジメの恩恵

神奈川県小田原市江之浦海岸周辺の海藻カジメが無くなったのは海水温が上がったせいだけではない。

江之浦のカジメ林

カジメは褐色の海藻でサザエやアワビのエサになる。

ダンゴウオの稚魚は若いカジメの上で育つ。

大きく育ったカジメの林は多くの魚の棲家や産卵場になる。

また、ニザダイ、ブダイ、アイゴ、メジナ、ベラ、タカノハダイなどの魚やウニのエサにもなる。

多くの生物がカジメの恩恵を受ける。

以前は食べられても問題ない量のカジメが育っていた。

江之浦周辺のカジメは無くなった

江之浦のカジメ若体

かつて江之浦は深度6m~16m海底の岩上全体に繁茂していた。

今はほぼゼロ。

磯焼けと言う状態。

アワビは全く捕れなくなった。

何処に行ってもカジメの姿はない。

アワビがいなくなり、サザエも少ない。

漁師にとって死活問題。

カジメの成長

カジメの寿命は多年生で3~7年。

夏の終わりから秋にかけて熟した成体葉部から遊走子(胞子のようなもの)を放出。

遊走子が適応深度の岩礁に着底しカジメとして育つ。

カジメの幼体は笹の葉状。

カジメの幼体
カジメの幼体

葉部の両縁から側葉が発達し大きくなる。

茎部は最初短いが成長すれば1mほどに伸びる。

大きくなると全長2~3mに成長する。

アワビやサザエのエサの海藻カジメが無くなった

カジメが多く被害にあったのは2018年の台風

カジメが無くなったのキッカケは台風の影響。

2018年7月28日台風12号が関東周辺を襲った。

このとき江之浦沿岸は大ダメージを受け、海岸線を走っていた車15台が流された

救急車やパトカーまで被害を受けた。

続いて12日後の2018年8月8日にも台風13号が江之浦を襲った

カジメの葉が千切れた

この2つの台風で海底も大きく破壊。

ゴロタ石が転がり多くの生物を潰した。

多くのカジメの葉が千切れて無くなった。

カジメの残った部分をアイゴとメジナに喰われた

葉辺基部から新しい葉が再生すると思っていたがアイゴとメジナに喰われ枯れていった。

魚もカジメが減ってビタミン不足。

新しく芽を出した幼体も多くの魚のエサになった。

翌年2019年10月も台風19号の被害

さらに翌年2019年10月台風19号の被害を受け、江之浦が昨年に続き壊れてしまった。

海底は再び大荒れに壊れた。

残っていたカジメもさらに少なくなった。

月日と共に徐々に数を減らし無くなっていった。

そして現在の磯焼け状態が続く。

現在もカジメが芽生えると魚たちのエサになっていると思われる。

神奈川県江之浦15年間の月毎の水温

江之浦15年間の海水温のグラフ

1999年から昨年2024年までの15年間の海水温をグラフにした。

江之浦の海水温の変化

江之浦の海水温の変化

一年で一番水温が低いのは3月下旬、一番水温が高いのは9月上旬。

この15年で1~2℃上昇の傾向。

カジメの上限温度28~29℃

カジメの成育適応水温は20℃前後、上限は28~29℃。

30℃になると枯死する。

まだ枯死するほど江之浦の水温は高くない。

水温的には十分カジメが育つ環境だと考えられる。

カジメが減ったキッカケは数回の台風、その後少なくなったカジメを魚たちに喰われ月日をかけて消滅。

カジメを再生させるためには

大量のカジメを同時発生

江之浦のカジメ林

魚が食べきれない大量のカジメを同時に発生させる。

これはちょっと無理。

これが出来ないから苦労している。

カジメを食べる魚を除去

カジメをエサとする魚を除去する。

どうやって捕るかが問題。

無駄な殺生はしたくない。

カゴの中でカジメを育てる

ベラなどの小魚も入れない小さい目のカゴの中で多くのカジメを育てる。

現在ダイバーと漁師たちによる小田原藻場再生活動として試しにカゴの中でカジメを吊るして実験している。

カゴの網目が大きいので大きなアイゴやメジナ、ブダイは入らないが小さなベラは中に入ってカジメを啄んでいる。

深度は14mと16mの深度に設置。

現在一つのカゴのカジメの中は何もない。

二つめのカゴのカジメも小さく少なくなっている。

ちょっと深すぎる気がする。

光合成を盛んにするには深度6~9mが都合が良いかと思われる。

ワカメ養殖と同じ沖にロープで吊り下げる

深度20m以深の水域で深度6mの中層にロープを張り、この中層ロープで多くのカジメを育てる。

ワカメの養殖で行われている漁法。

ワカメは水面近くだがそれをカジメの成育深度6mまで沈める。

カジメが育つようなら9月の遊走子を出す頃に浅い岩礁地に移動させる手もある。

その後はまた沖へ移動し魚からの食害を避ける。