毒針を持つ美しいアオミノウミウシ

小さな妖精

海へ行く

海へ通って何十年にもなる。

昔よりは物知りになり、楽しさも倍増。

そんな中で新しい発見があると嬉しくてたまらない。

何かに巡り逢うことを期待して今も海へ行く。

見たい憧れの生物

以前から逢いたいと思っている生物がいる。

人間ではない。

海へ行くたびに捜すが未だ見たことがない。

ヤツは怪物。

死神リューク

デスノートに出てくる死神リュークに似ている。

まさに死神。

決して優しいとか、可愛いとかそんなフォルムはしていない。

触ればバチが当たり、害もある。

見たい憧れのアオミノウミウシ

貴賓のある青いグラデーション

色は美しくもある。

青と白のグラデーションは貴賓すら感じる。

鳥の羽のような触腕は左右対称。

6対の手には細長い指が広がる。

鳥のオオルリが翼を広げ花のように化けたらこんな感じだろうか。

洋服の模様にもなりそう。

この生物は海にいる。

名前はアオミノウミウシ

大きさは5cm以下、平均は2~3cm。

熱帯性で沖合の海上を生息場所とする。

写真はWikipediaより

黒潮に乗り、南風に吹かれて春から初冬の暖流に乘ってやってくる。

関東近辺にもやってくる。

見られたらラッキー、でも触ってはいけない。

アオミノウミウシは毒針を持つ。

ウミウシ、ミノウミウシ

ウミウシとは

アオウミウシウミウシとは軟体動物。

陸上のナメクジの水中バージョン。

同じ軟体動物の仲間にはタコやイカ、巻貝や二枚貝がいる。

ウミウシのエサは種類によって違う。

海藻や藻を食べるもの。

カイメンをエサとするもの。

他のウミウシを捕食するものもいる。

ミノウミウシは

ミノウミウシの仲間はウミウシの中でも変わっている。

体全体を蓑のようなフサフサで覆う。

ミノウミウシのエサは毒針を持つクラゲやヒドラ虫、ソフトコーラル。

そして毒のある部分を自分のものにして役立てる。

毒のある刺細胞を捕食するとその刺細胞を発射できる状態で自分のミノの先端に蓄える。

そして自分を攻撃する相手に刺細胞から毒針を発射する。

知らずに素手でミノウミウシを触ったならミノウミウシの捕食した刺細胞にやられてしまう。

他の生物の刺細胞を捕食し、自分の武器とするミノウミウシの行動を専門用語で盗刺胞と呼ぶ。

アオミノウミウシのエサ

ヒドロ虫を食べるアオミノウミウシ

アオミノウミウシのエサは電気クラゲで知られるカツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリ

カツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリの体や刺細胞を食べる。

食べた刺細胞をアオミノウミウシの蓑の先端に蓄える。

体は小さいが強力な刺細胞を持つ。

カツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリは正確には通常のクラゲの仲間ではない。

ヒドロ虫の群体、ヒドロ虫が集まった生物。

カツオノエボシ

カツオノエボシの浮き袋

カツオノエボシの触手は青く、長く伸び通常1m、大きいもので最長20mも伸びる。

触手には一定間隔に強力な刺細胞があり、魚などが絡まると触手が縮み多数の毒針に刺され悶絶する。

たった1つの刺細胞に刺された痛みは尖ったガラス片を突き刺した痛みと同等。

それが何ヵ所、何十カ所も体に巻きつくのだからたまらない。

動画カツオノエボシを食べるアオミノウミウシ

ギンカクラゲ

ギンカクラゲギンカクラゲは貨幣のような丸いクラゲ。

カツオノエボシと同じように青い。

大きさは1円玉ほど。

円の周囲全体から短い青い触手が伸びる。

触手にはカツオノエボシ同様に強力な刺細胞が並ぶ。

動画ギンカクラゲを捕食するアオミノウミウシ

アオミノウミウシが水面に浮く技法と理由

空気飲んだお腹が浮袋

アオミノウミウシの変わっている所はエサだけではない。

通常どのウミウシも水底を這ってエサを捜す。

エサが水底にあるゆえに水底で生活をする。

カツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリは水面に浮いているゆえ捕食のために自らも浮く必要がある。

ゆえにアオミノウミウシは水面に浮いて生活をする。

浮くために水面で空気を飲み込みお腹に空気を貯める。

浮力がお腹にあるため仰向けに浮く。

上の青い部分が腹側、下の部分は背中側で白い。

移動は風まかせ、海流まかせ

写真はWikipediaより

水面に浮きながらエサを捜す。

泳ぐ能力は低い。

広大な海で偶然見つけたエサは離さない。

次回いつ探せるか解らない。

探せなければ飢え死にする。

エサのカツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリの移動は風に吹かれ、海流に乗って移動する。

アオミノウミウシはエサのカツオノエボシらと一緒に移動する。

アオミノウミウシの繁殖

アオミノウミウシは雌雄同体

熱帯、沖合い生れのアオミノウミウシは雌雄同体。

広い海の中で2匹のアオウミウシが出会うことは難しい。

偶然出逢った2匹は雌雄関係なくお互いの精子を相手に託し、卵を産む。

雌雄同体であれば受精産卵の可能性が高くなる。

大船にあるラウト吉田氏の動画、アオウミウシの貴重な交接シーンが見られる。

アオミノウミウシの産卵

アオミノウミウシに産卵期はない。

毎日3~9千個の卵を産む。

多くの卵を産むことで広大な海で子孫を増やす確率を高くする。

エサの少ない沖合の海、小さな生物ゆえに多くは他の生物に食べられる。

アオミノウミウシもエサを探せなければ生きられない。

風に流され海岸に打ち上げられれば乾燥して死ぬ。

多くの卵を流れに乗せて撒き、生存の可能性をあげる。

アオミノウミウシを見るには

フィンアート アオミノウミウシ

カツオノエボシやギンカクラゲ、カツオノカンムリは群で移動することがよくある。

1匹のカツオノエボシを見つけたら近くに何十、何百ものカツオノエボシいる。

その中に便乗しているアオミノウミウシがいる可能性は高い。

見てみたい青い怪物。

英語で Blue Angel 、 Blue Dragon 、 Sea Swallow と呼ばれるアオミノウミウシ。