1年が寿命の鮎の一生と友釣り

鮎の一生

桜の咲くは稚鮎遡上の時期

沖縄では海開き、海水浴が始まった。

桜も満開の時期を過ぎ、散り始め。

荒川や多摩川などでは6cmほどの稚鮎が遡上。

鮎というのはサケ科の魚なのに変わった魚。

サケはエサの豊富な海で育つ

サケは産卵のため海から遡上する。

産卵後、孵化した子供は川を下って海で育つ。

3~4年で大人になると自分の産まれた川に戻ってきて産卵。

これは川よりも海の方が豊富にエサがあるため。

川より早く、大きく、強く、育つことが出来る。

理にあった育ち方。

鮎は川で育つ

けれど鮎は川で育つ。

何故、鮎はエサの少ない川で生きていけるのか?

それは変化する鮎のエサが理由。

稚鮎は小さなプランクトンや水性昆虫などを食べる肉食性だが川を遡上している内に徐々に草食性に変わる。

変わる食性

清流の石の表面に生える苔、藍藻や珪藻を食べるようになる。

それゆえ川でも豊富にエサを食べ育つことができる。

水苔を食べるとエラ近くに2つの黄色い斑紋が出てくる。

鮎釣り師はこの黄斑紋を追い星という。

水苔だけ食べる

水苔を専門的に食べるようになった鮎はもう水性昆虫は食べない。

水の綺麗な流れの良く陽の当たる石に水苔がつくため、鮎はそのような場所に集まる。

石の上に生えた水苔を鮎は歯でこそげ取るように食べる。

その姿は石に体を打ちつけているように見える。

石には水苔を食べた後がハッキリ残る。

これを食み跡(はみあと)と呼ぶ。

縄張り

美味しい水苔の生える石は鮎に人気。

大事なエサを取られちゃいけないと近くに来る他の鮎を追い払う。

このため鮎は小さな縄張りを持つ。

しかし1匹鮎がいる場所には何匹もの鮎がいることが多い。

良く食べる鮎は黄色くなる

夏の暑い8月頃、水苔も良く育つ。

エサの豊富なこの時期、水苔を沢山食べる鮎は太り、体全体が黄色おびてくる。

この頃1日1mm成長すると言われ、とても成長が早い。

錆鮎

9月中旬~10月下旬、産卵のための準備が始まる。

鮎は川を下り始める。

体色が変わってくる。

体全体が黒っぽくなりヒレと腹、エラの部分がオレンジ色に変わる。

オスの方がやや小型で黒くなる。

この色の鮎をサビ鮎と呼ぶ。

産卵

産卵は河口に近い下流域の浅瀬で行われる。

群れを作り、小砂利の中で産卵。

メスが砂利の間に潜り込むように産卵すると何匹ものオスが争うように精子をかける。

卵はサケと同じ粘着卵で石に付着する。

卵の大きさは1mm。

産卵後に死ぬ

産卵を終えた鮎は精根を使い果たす。

オスもメスも関係なく短い生涯を終え流されていく。

鳥やカニ、シーバスなどのエサになる。

孵化後

受精した卵は2週間ほどで孵化。

しっぽの方から殻を脱ぐように世の中へ飛び出す。

6mmほどの仔魚は数日で泳げるようになる。

そして河口へと移動し、海水に体を慣らしていく。

河口周辺と海に棲むようになり、プランクトンなどを食べ海遊する。

冬の間、川よりも水温の下がらない海で育つが河口よりあまり離れた場所へはいかない。

桜咲けば遡上

海でプランクトンを食べて6cmほどの大きさに育った稚鮎は河口に集まる。

そして、桜の咲く3月中下旬から4月に川を遡上する。

鮎は1年で寿命を全うする1年魚。

稀だが川によっては2年魚になる鮎もいる。

人気の鮎の友釣り

他に無い釣方

鮎の友釣りは風変わりな釣り。

そして釣趣の良さで人気。

日本独特の釣法。

友釣りはエサを使わない。

大人の鮎は虫エサを喰わない、水苔をエサにしても釣れない。

そこでエサの水苔を守るために他の鮎に体当たりする習性を使った釣方が生まれた。

鮎をオトリに

エサは使わず1匹の鮎をオトリに使う。

オトリ鮎の鼻穴に釣り糸を付け、鮎の尻にブランコの針を付けて鮎を泳がす。

鮎が居そうな場所にオトリ鮎を誘導する。

水苔を守っていた鮎にオトリ鮎が近づくと体当たりしてくる。

すると仕掛けた針に鮎が引っ掛かる。

鮎2匹分の重みが竿を消し込む。

釣られた鮎は直ぐに古いオトリ鮎と交換して釣りが続けられる。

解禁日

鮎釣りの解禁は関東近辺では6月1日。

川によっては5月末に解禁する川もある。

各川では釣り人のために天然遡上だけでなく稚鮎の放流も行っている。

釣り人は漁協組合の遊漁券を買って釣りをする。

解禁したての鮎はまだ若鮎なので小さい。

けれど擦れてもいないし、数も多く釣れる。

また夏の鮎釣りの数は期待できないが大型が期待できる。

鮎の竿は10万円~60万円するものもある。

長さは10~12mほど。

鮎の魅力

スイカの香り

鮎の人気のもう一つは鮎独特の匂い。

一般の魚の匂いではなく、スイカのような香りがする。

この匂いは稚鮎の頃から感じられる。

但し、汚れている川だとスイカの匂いはせず、汚れた川の匂いがする。

ヤナ漁

鮎のヤナ漁は8~9月頃始まる。

これは産卵の準備の為、川を下る習性を利用したもの。

川の両側を堰き止め中央部だけに水が流れるようにする。

水が流れる部分にだけ竹で作ったすだれを設置し、水はすだれを通過し流れていき、魚だけすだれに残る。

すだれに残った魚は活きの良いうちに素早く回収する。

昼間だけでなく、夜も魚は下るため昼夜の作業となる。

また水が少なければ魚は下らない、水量が多すぎれば危険で近寄れない。

大水となればヤナはそっくり流されてしまう。

鮎を食べたければヤナ漁をやっている時期に茨城の久慈川や栃木の鬼怒川、その他各県のヤナ場へ行くと味わえる。