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浸漬性(しんしせい)肺水種って何?

水中で呼吸が苦しいと感じたら浸漬性肺水種かも?

初心者ダイバーに多い呼吸が苦しいという感覚

ダイビング続けて楽しんでいるダイバーには水中で苦しいっと思った経験は1度や2度はある。

水中で吸っても呼吸をしている感じがしない、そんな経験をしたことはないだろうか?

始めての水中での呼吸という興奮により、このような状態が生じることは初心者にはある。

ベテランダイバーでも状況により起こる呼吸苦

ベテランダイバーでも水中で重いものを持って移動したり、強い流れに逆らって泳いだり、大深度下で早い呼吸をしたりすれば同じよう息苦しくなる。

レギュレターから送られる空気抵抗が大きくても呼吸苦は生じる。

そんな時は落ち着いてゆっくりと深い大きな呼吸をするよう集中すると改善される。

病気でおこる呼吸苦

けれども病気のために呼吸苦が生じることがある。

それが浸漬(しんし)肺水種という疾患。

浸漬性肺水種は1981年から報告され始め、今もあまり知られず正しい理解がされていない。

浸漬性肺水種って何?

浸漬性肺水種を簡単に言えば水中に体を沈めると体が反応し、肺での酸素交換がスムーズに出来なくなり、呼吸苦が生じる疾患。

もし今まで問題なくダイビングが出来ていても、急にタンクのエアー消費が早くなったり、水中で息をしていても呼吸をしている感じがしない、吸えるエアー残量はまだあるのに息が苦しいなどと感じたらそれは浸漬性肺水種かもしれない。

浸漬性肺水種はダイビングの他、スキンダイビングや水泳でも発病することがり、入浴中に発症した報告もある。

浸漬性肺水種はどのように発症するのか?

人間の肺

成人の人間の肺には約5億個の肺胞があり、酸素と二酸化炭素の交換を行っている。

肺胞の大きさは径が0.3mmと小さく、ブドウの房のように沢山の肺胞がつながっている。

肺胞

肺胞に血液が通り、肺胞の薄い膜(0.2~0.3マイクロmm)を通して二酸化炭素を外に出し、酸素を内側へ入れている。

体を巡った血液は肺胞で二酸化炭素を外へ放し、新しい酸素を受け取るとまた体中の細胞へ運ばれる。

水中に潜ると血液が体中心に集まる

人間の体は水中に潜ると血液が体の中心に集まることが知られている。

心臓や肺に多くの血液が集まることにより、酸素が通る肺胞の膜内に水分が生じ肺水腫という状態になる。

水分が生じると肺胞の膜が厚くなり酸素が通過しにくくなる。

さらに程度が進めば血液に必要な酸素が届かなくなる。

また気道周辺の細胞にも水分が生じ気道が狭くなり呼吸がしづらくなる。

症状が酷くなると

症状が酷くなると肺胞の空間まで水が染み出し、酸素の取り込み量が減り血液中の酸素が少なくなる。

肺胞の膜が決壊すれば血液が肺胞腔へ押し出され、痰に血が混じるようになり、血液中に酸素を取り込めなくなる。

浸漬性肺水種が起きる

ダイビング中に息切れを生じたら浸漬性肺水種かもしれない。

深度が深くなれば酸素分圧が上がるので症状は改善する。

浅い深度に浮上してくると酸素分圧が下がり症状が悪化する。

安全停止をするような深度では息苦しさが明確になり、息切れ、大きくエアーが消費される。

水面へ浮上と共に意識を失うこともある。

酸素吸入が必要な状態、病院へ搬送して治療する。

水中に潜ることにより肺への影響を増強させるもの

  • 冷水へのダイビング
  • 水中での過大な運動
  • 気道内の陰圧(素潜り・フリーダイビング)
  • 心機能の低下

高血圧は浸漬性肺水腫になりやすい

高血圧は浸漬性肺水種になりやすく、繰り返し起こす傾向がある。

最高血圧が150mmhgを超えるようならダイビングを延期すべき。

血圧が高くならぬように体調を整える

アルコールの飲み過ぎや塩分の取り過ぎに気をつける。

睡眠不足、疲労、ストレスなど心臓にトラブルを起こしやすい状態をつくらない。

水温が低いと発症しやすい

自分に合ったダイビングスーツを使用する。

寒い時期のダイビングはドライスーツやヒートベストなどで保温する。

体を温める方法を考える。

きついダイビングスーツは発症リスク

きついウエットスーツは手足を締め付け、血液の流れを体中心へと促進する。

体に合っていないきついウエットスーツは浸漬性肺水種のリスクがある。

ダイビング前の水分摂取

ダイビング前の過剰な水分摂取は浸漬性肺水種のリスクを上げる。

また逆に脱水状態は減圧症(潜水病)のリスクを上げる。

浸漬性肺水種の治癒

一般的に浸漬性肺水種は安静にしていれば時間が経過するとともに症状が改善する。

おとなしくベッドに寝ていれば翌朝には改善しているのが普通。

しかし人により症状を繰り返すこともあり、時には重篤な状態になることもある。

浸漬性肺水種による死亡例も報告されている。

浸漬性肺水種を考えた今後のダイビング

ダイビング参加前

3枚のメディカルチェック表を使用し、自分の状態を確かめる。

ダイバーメディカル参加者チェックシート
ダイバーメディカル参加者チェックシートその1

日頃から体調を整える。

アルコールと塩分の取り過ぎに注意。

ダイビング当日

体調がすぐれない時はダイビングを延期。

水温に合った暖かい保護スーツを使う。

きつすぎない体に合ったダイビングスーツを使用。

ダイバーメディカル参加者チェックシート2枚目

ダイビング中

呼吸が苦しい時は動作を止め、落ち着いてゆっくり大きく呼吸をすることに集中。

呼吸が改善すればダイビング続行。

浸漬性肺水種が疑われる場合は潜水を中止する。

信頼のおけるインストラクターと一緒に潜る。