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シパダン島の痒い虫 日本でもヌカカの被害

ダイビングの楽園 シパダン島

苦い経験

あの恐ろしい島には2度と行きたくない。

その島はマレーシアのボルネオ島の東側にあるシパダン島。

まだ日本のダイバーがあまり知らなかった頃に3回ほど行ったことがある。

小さな島には3つのダイビングリゾートがあってホテル、ダイビングサービス、レストランを兼ねていた。

ダイビングは最高

島の周り全てがポイントで何処も魚が多い。

特にアオウミガメは1ダイブ潜れば8匹以上、時には交尾シーンも見れたり、ダイバーをメスだと思って乗っかってくるオスもいる。

ロウニンアジ、ギンカメアジの群れ、バラクーダの群れ、ガーデンイール、カンムリブダイの朝の集団出勤、オドリハゼ、パンダダルマハゼなど珍しい魚が色々見られる。

深い場所から、浅い場所までとにかく夢中になって潜った。

海は最高、レストランの食事も美味いし、この島の雰囲気に感激。

夜になっても興奮は止まらない。

事件発生

事件は翌日の朝に起こった。

体中が少し痒い、見てみると10カ所以上虫に喰われて赤く腫れている。

痒みはそんなにない。

ダニかと思い傷口を見みるがダニの特徴の2つ穴がない。

全て喰われた穴は一つだけ。

なんだ?

何に喰われているんだ?

島に常駐するスタッフに聞いても解らない。

夜は疲れているのでぐっすり寝た。

2倍に増える

翌日、朝起きると喰われた赤い斑点は2倍に増えている。

体が痒い。

これはたまらない。

痒みが酷い。

そしてもうひとつの不満が生じた。

喰われるのは一人だけ

なんと喰われているのは自分一人だけ。

他に喰われてる人もいるが多くて2~3カ所。

なんで俺だけ集中して喰われるんだ?

蚊に喰われやすいタイプでもない、普通の人と同じぐらい。

30カ所以上喰われて帰国した。

甘く見ていた2回目のシパダン

シパダンの魅力に取りつかれた。

半年後きっと何かの間違いだと思い2回目のシパダンへ行った。

再びシパダンの海に興奮。

シパダンの海は期待を裏切らない。

しかし、刺された数は1回目を軽く越えた。

あまく見ていた。

50カ所以上を喰われて帰国。

魔物が棲むシパダン

準備をして3回目のシパダン

シパダンの魅力に完全に取りつかれた。

1年後、3回目のシパダンを訪れた。

虫退治の準備も万端。

この時は日本からダニアースを持ち込んで夜寝る前に、ベッドのマットにたっぷりその液を浸みさせた。

これなら絶対大丈夫だろうと安心して寝た。

翌日目が覚めた時の結果は惨敗だった。

一晩で30カ所以上喰われていた。

日中マットを砂浜に出して照り付ける強い紫外線を当てて虫干しをした。

人間でも5分とはいられない強い日差し。

きっと大丈夫だろうとその晩も寝た。

けれど効果は無かった。

100カ所以上喰われる

それから喰われる数は一晩寝るごとに倍になっていく。

体中、前も後ろも、胸も腹も背中も、手も足も首も、赤い斑点ができ悪い病気に感染してるように全身赤い湿疹が覆う。

自分で見ても気持ち悪い。

病院へ行ったら隔離されそう。

触ると皮膚がゴツゴツして固くなっている。

もう喰われる柔らかい場所がない。

頭髪の中まで喰われる

最終日の朝、起きると頭髪の中まで喰われていた。

柔らかい皮膚は頭だけだった。

全身痒くてたまらない。

髪の毛があるのに犯人はどうやって喰うのか?

犯人は誰だ!

見えない相手に腹が立ち、怒りを覚える。

100カ所以上も喰われて、数を勘定する気もおきない。

全身の痒さに耐えるだけだった。

このときも、やはり喰われるの自分一人だけ。

よほど俺の血が好きらしい。

シパダンをあきらめる

そうか、この島は自分には向いてない。

シパダンが来るのを拒んでいる。

海も、魚も、島も、料理も、申し分なくシパダンが好き。

けれどこの痒さだけはダメだ。

たまらない。

それ以来シパダンへ行くことはなかった。

いくら誘われてもシパダンだけは無理だ。

どんな虫が私の体を喰ったのか長い間、解らなかった。

正体はヌカカ、英語でサンドフライ。

ヌカカ(糠蚊)

大きさ1mm

ヌカカは世界中にいる。

日本人にとってブヨは知られているがヌカカはあまり知られない。

ヌカカはブヨの小型バージョン、小さなハエのような形をしている。

ブヨの大きさは3~5mmと小さい、ヌカカの大きさは1~2mmとさらに小さい。

小さいヌカカは網戸の目をすり抜け、蚊帳(天蓋)の網目もすり抜ける。

ブヨもヌカカも蚊と同じメスが繁殖の為に動物の血を吸う。

皮膚に穴を開け、唾液を入れてから血を吸う。

唾液に反応して数時間後に強い痒みが襲う。

ブヨは川育ち、ヌカカは海育ち

ブヨは山の清流に育ち、ヌカカは海辺に育ち川辺にも水辺にも育つ、街中で繁殖はしない。

ヌカカが繁殖する多くは熱帯、亜熱帯地方の水辺。

素肌を露出していれば喰われる。

また服の内側へ入り込み胸や腹も喰われる。

日本での繁殖は

奄美大島の浜辺ではスケベ虫とも言われるトクナガクロヌカカが繁殖して被害。

鳥取県米子の弓ヶ浜半島の干拓工事後にトクナガクロヌカカとイソヌカカが繁殖して被害。

伊豆半島の岩場でイソヌカカの被害。

地球の温暖化、増大する漂流ゴミに付着して増殖している可能性。

後述

シパダン島は環境保護の目的でリゾートホテルを除去し無人島になった。

現在のシパダン島周辺は人数制限をしており1日120人までしかダイバーが入れない。

シパダン島で潜るには近くのマブール島リゾートホテルに宿泊してそこから日帰りのボートダイビングとなる。

潜りに行った人の話を聞いたが海の中は相変わらず魚が沢山いて面白い。

昼休みに島へ上陸した人は全員足をサンドフライに多数喰われる。

素肌を露出して上陸した人は全てサンドフライに喰われた。

宿泊者がいなくなって腹が空いているらしい。

今自分がシパダンに上陸したらあっと言う間に体中ボコボコ。

考えるだけでぞっとする。

無人島になったシパダンには血に飢えたヌカカが繁殖。