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いきなりミンミンゼミが鳴きだした
ミーーーン ミーーーン
今日は体育の日だ。
声はクヌギの老木から聞こえてくる。
読書をしている朝の事だ。
休日の朝という事で長閑な時間帯、天気は曇り。
昨日の夏のような暑さは無くなったがそれでも半袖でいられるぐらい暖かい。
「ミーーーン ミーーーン ミーーン ミーーン ミーー
ミーーーン ミーーーン ミーーン ミーーン ミーー ミミミ・・・」
たった1っ回だけの唄だった。
発声練習で声を確かめているような慎重な鳴き方。
それもフルコーラスは歌わず途中で止めてしまった。
夏のような馬鹿陽気
このラストゼミは昨日の夏のような馬鹿陽気で勘違いをしたようだ。
土から目覚め今朝、羽化してしまったのではないだろうか。
メスを求めて子孫繁栄の儀式をするために土から出てきた。
本来ならもっと早く夏の盛りに羽化するつもりが成長の遅れで叶わず、地中で木の根から養分を吸って時を待った。
そして羽化できる大きさまで育った、けれど時遅し、秋になってしまった。
あと一年土中生活を我慢するしかない、羽化も来年の夏まで我慢するしかない。
そう思っていた。
なのにやってしまった!
季節外れの10月に世に飛び出してしまった。
ミンミンゼミの一生
活動シーズン
ミンミンゼミの陸上での活動シーズンは7月末~9月上旬、今は10月体育の日とシーズンを1ヵ月も過ぎている。
涼しくなった秋10月、通常ならセミの羽化などありえない。
それとも9月上旬に羽化したオスがスズメバチや蜘蛛などに襲われず、台風の強風にも耐え、鳴かずに今まで待っていたのか?
それもありえるかも?
土中生活6~7年
セミは6~7年の間、地中で幼虫生活をする。
木の根から樹液を吸って生活し、成虫になるために陸上に出て羽化をする。
そして交尾のため最後の2週間を過ごす。
鳴くのはオス
セミの成虫が鳴くのはオスだけだ。
オスはメスに比べ鳴きやすいように体が軽く、腹の中は共鳴する空洞がある。
メスの腹の中はオスのような空洞は無く卵巣で満たされている。
ラブコール
オスのセミが鳴くのは交尾の相手になるメスのセミを誘うためだ。
ミンミンの声はメスのセミを口説く愛の囁きだ。
鳴き声を気にいってくれればメスがやってきて交尾成立、ゴールイン。
メスが来ずに目的を達成できないオスもいる。
ラストゼミもきっと焦っているだろう。
やってしまった
仲間もいないし、メスもいない。
何処からも他のセミの声が聞こえない。
いくら鳴いてもメスは来ない。
気温が下がる毎に体の動きが鈍くなる。
きっとギラギラとした太陽と暑い夏の日を夢に思いまながら耐えている。
天寿を全うするまで。