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殺人ダコ出現
冬に見る
今年も冬になって現れた。
人間をも殺す猛毒を持つ殺人ダコことヒョウモンダコだ。
海況良好
2019年2月3日、風も無く波もうねりもない穏やかな海、3日前まで16℃あった水温は1℃下がり15℃、冬の海だ。
波打ち際には黒いイワノリが育ち季節を感じさせる。
陸上の気温は16℃まで上がり春が一足先にやってきたような感じがある。
ドライスーツとスキューバ器材を装着し海へ入る。
波が無いのでエントリーもしやすい。
水中はにぎやか
潜降して直ぐに出迎えてくれたのはソラスズメダイの群れ、キビナゴの群れ、カミナリベラの群れ、元気に泳ぎまわり冬を感じさせない。
数日前降った雨の影響か?透明度はやや落ちて15mほど、それでも綺麗に良く見える。
呼吸を馴染ませ、ゆっくり静かに沖へ向かう、大きなボラが10匹ほどで石の表面についた藻を口でこそげ取りながら食べている。
ヒョウモンダコ
擬態の名人
深度6mの最初のポイントまで泳ぐと水底に着底、すぐ目に飛び込んできたのは岩に同化したヒョウモンダコ、とても見事に岩に化けている擬態の名人、色と形を瞬時に変える。
水中では実際にこのように見える。
まったく動かない。
薄暗いので何が何処にいるのかよく分からない。
ライトを照らす。
なんとなく輪郭が見える。
けれども良くは解らない、普通は見逃してしまいがちだ。
動けば解る
少し動かしてみる。
見事にタコの形を現わした。
大きさは全体で10~12cmほど、イイダコと同じで小さなタコ、これで大人だ。
頭の先がチョンと尖っている。
頭のような胴の付け根に目があり足は確かに8本、手を伸ばして何か言いたげな?
Blue ringed octopus
所どころ青い線が見える、英語ではBlue ringed octopusと呼ばれている。
興奮すると青線を鮮やかに発色させて威嚇する。
噛まれたらやばい
ヒョウモンダコは猛毒を持っていることで知られる要注意危険生物のひとつ。
何処に毒を持つかというと唾液の中に毒を持つ。
獲物を捕まえると噛みつき、唾液の毒で相手を麻痺させて食べる。
猛毒テトロドトキシン
その毒はテトロドトキシンいう。
マフグやトラフグの毒と同じテトロドトキシン、人間の体内にこの毒が注入されると麻痺、呼吸困難、そして呼吸停止となるとってもやばい毒をヒョウモンダコは持っている。
一般にはあまり知られていないがマダコの唾液にも毒はある、けれどヒョウモンダコのような猛毒では無いので万が一毒を注入されても痛みだけで留まり、1時間ほどで痛みは和らぐ。
どちらにしろ歯は鋭いので噛まれないのが一番。
熱帯、亜熱帯性?
このヒョウモンダコは熱帯、亜熱帯のサンゴ礁や岩礁帯に生息すると言われる。
「海水温の上昇により分布北限が北上を続け、1999年には大阪湾での捕獲が記録されているほか、2009年になってからは九州北部の福岡県・佐賀県・長崎県・大分県で多く目撃されていることから、警戒を呼び掛けている。また、日本海側や浜名湖での捕獲や目撃も報告されている。」ウイキペディア(ヒョウモンダコ) 抜粋。
というがこれは違う、昔からヒョウモンダコは伊豆近辺にもいたし、実際に目撃もしている。
温帯性
最初に見た記憶は30数年前の3月伊豆海洋公園、水温は14℃。
関東周辺、1年で水温が一番低いのは3月末で13~14℃、一番水温の低い時期にヒョウモンダコを見ていた。
そしてその後も年に0~3回見ている。
一昨年は神奈川県小田原市の江之浦海岸で冬、昨年も同じ江之浦で1月、2月、3月と水温の低い14~16℃の時期に3回も目撃している。
そして今年も2月3日水温は15℃だった。
なぜ、水温の低い時期によく見つかるのだろう?
もちろん水温の暖かい時に見ることもある。
でも水温の上昇でヒョウモンダコが出現するようになったのではないことだけは確かだ。
ヒョウモンダコは熱帯性、亜熱帯性の生物だけではない、温帯域の伊豆半島や三浦半島、房総半島にも生息し、水温の低い真冬でも生活できる生物だと実感している。
自己防衛
ヒョウモンダコは決して危険で獰猛な生物だとは思えない、それはヒョウモンダコが人間を襲う事実が無いからだ。
ヒョウモンダコの獲物は人間ではない、ゆえに人間を襲う意味がない。
もし危険な状況を作るなら、それはヒョウモンダコを人間が手で捕まえた時だろう。
ヒョウモンダコにとっては恐ろしいのは人間だ、手づかみにされたなら噛みつくことしか抵抗できない。
そんな事故がお互いに起こらないようにヒョウモンダコをもし見つけても触らずに静かに見守ってあげて欲しい。
忍者のように色と形を変えながら隠れ消える姿を見ることが出来る。